ベリス族長の息子と人間の少女の物語(9)
今回は遥か昔のベリス族長の息子が主役です。
酷過ぎる……
しかも、かなりの死傷者が?
戦地に行ってリリーと同じ匂いがする人間を捜せば……
でも……死んでいたら?
それに生きていた平民は帰って来たんだよな?
やっぱり……もうリリーの家族は……
……どうしたらいいんだ。
オレはモヤモヤしたまま島に帰った。
リリーには言えないよ。
戦が終わって死傷者がたくさん出ているなんて。
「お兄ちゃん……」
リリーが家から出て来たな……
オレが貸した服を着ているけど……
リリーはかわいいから男物の服を着てもかわいいな。
せっけんを使ったから髪もサラサラだし。
さっきまでは分からなかったけど……
銀色の髪なんだな。
珍しい髪色だ。
青い瞳も海みたいで綺麗だ。
……すごく……美しい。
「あ……今帰ったよ。リリーに色々買ってきたんだ。ほら、この服を着てみて? あと……ほら。リリーに似合いそうな髪飾りがあってね」
「え? 髪飾り?」
「花の形がかわいかったから……あ、こういうのは嫌いだったかな?」
「ううん。嬉しい……髪に飾りをつけた事なんてないから」
「えっと……お店の人間が耳の上の辺りにつけるといいって教えてくれたんだ。よし。できた。痛くない? よく似合っているよ」
「……恥ずかしいよ……でも嬉しい……」
「今すぐお菓子を焼くからね。少し眠る?」
「ううん。興奮して眠れそうにないよ」
「興奮?」
「ここに来てから見た事が無い物とかがいっぱいあって。せっけんはいい匂いがするんだね。お兄ちゃんの服もサラサラで気持ちいいよ」
「それは良かったよ。でも、リリーに似合いそうな服も買ってきたから。この服に着替えてみて? 市場で人気の服なんだって」
本当はキラキラのドレスをあげたかったけど腕が丸見えになる物しか売っていなかったから……
買ってきたのは袖が長い服だからリリーも安心かな?
「うわあぁ! ありがとう。かわいい……こんな綺麗な服……似合うかな?」
「もちろんだよ! リリーは今まで見た人間の中で一番綺麗だよ」
「……わたしが……綺麗?」
「うん! すごくすごく綺麗だよ。そんなに綺麗な髪色も見た事が無いし」
「髪色? あぁ……叔母さんがこの髪色だったみたいなんだ」
「へえ。叔母さんは今どこに?」
「あぁ……それが……」
「あ、ごめん……」
「え? あ、違うの。生きてるよ? たぶんだけど……ね。遠くに住んでるから。それにそこがどこだかも分からないの」
「……? それって?」
「あの……変な話だと思うかもしれないけど……不思議な力があるらしくて……よく分からないんだけど……隠れて暮らしているらしくて」
「不思議な力……?」
「……うん。あの……遥か昔……わたしのご先祖様は……魔族と……一緒に暮らしていたらしくて」
「……!」
魔族と暮らしていた?
遥か昔?
子孫繁栄の実が無くても異種族との間に子が授かった時代の事かな?
じゃあ、リリーには魔族の血が混じっているのかな?
だから、リリーを食べたいと思わないのかも……
 




