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ベリス族長の息子と人間の少女の物語(7)

今回は遥か昔のベリス族長の息子が主役です。

「恥ずかしいよ……」


 リリーが気まずそうにしている?


「え?」


「家は元々貧乏で……でもこの辺りに住んでいる人は皆貧乏だったから恥ずかしくはなかったけど……お兄ちゃんにはこんな話をしたくなかったよ」


「恥ずかしくなんてないよ。リリー……手を握るよ?」


「……うん」


「小さい手だね」


 冷たくてガリガリに痩せている……

 苦労してきたんだろうな。


「……ボロボロでガサガサで恥ずかしいよ」


「それだけリリーが頑張ってきたっていう証だよ」


「……お兄ちゃん」


「行こう。二人だけの島に……オレもなるべく島にいられるようにするからね」


「……うん」


「グルル」


 ……!?

 ジャバウォック!?

 どうしてここに……

 お腹が空いて動けないんじゃなかったのか?


「あ……これは……あの……」


 どう見ても魔族だよ!

 どうしよう……

 困ったな。


「あ……えっと……田舎の犬は……大きいんだね」


「えっ!?」


 あぁ……

 そうか……

 オレはすごい田舎から来たと思われていたんだ。


「あは……あはは。そうなんだよ……」


「えっと……この犬は……果物を食べる犬……なんだよね?」 


「え!? そ……そうなんだよ……あはは……」


「そっか……」


「犬が……誰もいない島まで運んでくれるからね」


「う……うん」


「怖くないからね……あ、あと……田舎の犬は飛べるんだよ」


「……え?」


 さすがにこんな嘘は通じないかな……


「あの……えっと……飛べるんだよ……田舎の犬だから……うん」 


「……ふふ。うん。そうなんだね。お兄ちゃんは……優しいね」


「え?」


「優しくて……不器用だよ」


「え?」


「えっと……背中に乗ってもいいのかな? 二人も乗って重くない?」


「グルル」


 リリーが乗りやすいようにジャバウォックがかがんでくれたけど……

 口の周りから果物の匂いがする。

 我慢できなくてその辺の果物を勝手に食べたんだな……

 動けないとか言っていたけど動けたんじゃないか……

 こいつ、結構ずる賢いんじゃないか?


「ふふ。犬は果物を食べたんだね。甘い匂いがするよ?」


「グルル」


 こいつ……

 リリーに甘えた声を出しているぞ?

 オレの時とは態度が違くないか?

 肉食の魔族のくせに……

 あ、オレもそうか。


 どうしてかな?

 リリーの事は食べたいとは思わないんだ。

 守らないといけないっていうか……

 それに……

 ほんの少しだけ人間じゃない匂いがする……?

 気のせいかな?


 こうしてオレとリリーはジャバウォックに乗って空を飛び、誰もいない小さな島に来た。

 これからこの島で二人で暮らすのか。

 いや、ジャバウォックがいるか。

 種族王から借りているから離れるわけにはいかないんだ。

 オレはベリス族長の一人息子だけど族長の仕事は全部父上がしているから何もする事がないんだ。

 種族王に呼び出されたら鉄を金に変えるくらいしかやっていないし。

 はっきり言えば暇なんだよな……

 魔族は永遠の時を過ごすからやる事が無いとただぼんやりしているだけになるんだ。


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