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ベリス族長の息子と人間の少女の物語(1)

今回は遥か昔のベリス族長の息子が主役です。

「はぁ……今日も朝から晩まで種族王に鉄をきんに変えさせられたな」


 オレはベリス族だから鉄を金に変える力があるんだけど……

 派手好きの種族王に付き合うのも楽じゃないな。

 城中の家具を全部金に変えさせられたよ。

 そのうち壁まで金にしろとか言われそうだ。

 でも、ベリス族長の息子はオレだけだし父上の為にも頑張らないとな。


「さて、帰るか」


 種族王にジャバウォックを貸してもらったから空を飛んで行けて楽だな。


「グルル」


 ん?

 ジャバウォックが何か言っているけど……?


 ……!?

 いきなり急降下している!?

 

「うわあぁ! 落ちるぅぅう!」


 いくら魔族だからってこれはまずいよ!

 さすがに死ぬぅぅぅっ!

 ……?

 あれ?

 普通に着地した。

 はぁ……

 助かった。


「グルル」


「ん? ジャバウォック? ごめん。オレには何て話しているか分からないんだ」


「グルル」


「えっと……え?」


 地面に爪で文字を書いている?

 話せないだけで賢いんだな。


「えっと……腹が減った……?」


 困ったな。

 人間もいないし……

 何か食べられそうな物は……

 

「グルル」


「え? あの木……? あ、果物が……え? もしかしてオレが木に登るの? ジャバウォックは飛べるんだから自分で……」


 ジャバウォックが首を横に振っている?

 このままじゃ家にも帰れないし仕方ないな。

 オレは木登りとか苦手なんだけど……

 ……うぅ。

 やっぱりできない。

 

「グルル?」


 ジャバウォックが首を傾げている……

 

「オレ……魔族だけどこういうのが苦手なんだ」


「グルル?」


「よし。石を投げて果物を落とすのはどうかな? えっと……石……石。あった。これを投げれば……あれ? 上手く当たらないよ」


 ん?

 人間の匂いがする……


「何してるの?」


 人間の女の子?


「……あ、えっと……」


 あ、そうか。

 帽子を被っているから角が見えないのか。

 人間だと思われているのかも……


「それ……何? ……犬?」


 しまった。

 ジャバウォックを見られた。

 でも犬だと思っているみたいだ。

 騒がれなくて良かった。


「あ、えっと……うん」


「ずいぶん大きいんだね」


 夜だし月も出ていないからよく見えていないんだな。

 オレは魔族だからよく見えるけど。


「あぁ……いっぱい食べるからね」


「ふぅん。今、その果物を食べようとしていたの?」


「あ……うん。君の家の果物だった?」


「違うけど……それ、渋くて食べられないよ?」


「え? そうなの?」


 ……ジャバウォックはこの人間を食べればいいんじゃないかな?


「グルル」


 え?

 何だろう?

『果物の口になっているから人間は食べたくない』みたいな顔をしているような……


「ふふ。お腹の音も大きいんだね」


 ……鳴き声だなんて言えないよ。


「そ……そうなんだよ」


「少し離れてるけどあっちに果物の木があるの。行ってみる?」


「助かるよ。でもジャバ……えっと……犬はもう動けないみたいで」


「ふふ。お腹が空き過ぎちゃったんだね。じゃあここで待ってて?」


 ありがたいけど、こんな暗闇に女の子一人で行かせるわけにはいかないよ。

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