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ハデスから語られた過去(1)

今回は『じいじ』だった頃のハデスが主役です。

 あれは……

 まだ魔王様が転移してくる遥か昔の話。

 前魔王が魔族達を支配していた頃の事……



「伯父上……魔王様はなんと?」


 魔王城から帰って来たわたしに、ヴォジャノーイ族の甥がビクビクしながら話しかけてくる。

 そんなにわたしが怖いのか……


「反乱の兆しのある種族を消し去れとの事だ」


「そんな……またですか? 今度はどの種族を?」


「オーク族だ」


「オーク族!? 反乱なんて……何かの間違いでは?」


「……だろうな。オーク族長はそんな事ができるような奴ではない」


「オーク族を傘下に入れている種族王は最近魔王に亡き者にされていましたね」


「……そうだな。新たな種族王にはオーク族長をと聞いて先手を打ったのだろう」


「オーク族長は真面目ですから。言う事を聞いているうちはいいですがそうでなくなった時は強敵になりますし……」


「魔力こそ無いが、同じく魔力を持たない種族にとっては『エメラルドのオーク』として崇められているからな」


「……伯父上……本当にやるのですか?」


「……」


「……伯父上……あの……」


「お前は黙って見ていろ」


「伯父上……」


「わたしが死ねば次期ヴォジャノーイ王はお前だ。分かるな?」


「伯父上……嫌です。……無理です。わたしなんかに種族王は……」


「……」


「呆れているのですよね……わたしは臆病者だから……」


「……」


「でも……わたしは……伯父上に死んで欲しくないのです。伯父上……わたしを一人にしないでください。母上が亡くなって……わたしにはもう伯父上だけが唯一の……」


 ……天族の家族に見捨てられたわたしを『家族』と思ってくれるのはこの甥だけなのだな。

『今のわたしのヴォジャノーイ族の身体』の妹の息子……

 妹はもう亡くなったが……

 産まれた時からかわいくて仕方がなかった。

 わたしの唯一の家族……

 わたしが死ねば一人になってしまうのか。

 そうなれば優しい甥はすぐに同族に殺されてしまうだろう。

 甥を殺した者が次期ヴォジャノーイ王だからな。

 

「……わたしに生きていて欲しいか?」


「……! はい! 伯父上は弱いわたしに呆れているかもしれませんが……わたしは……伯父上が……大好きです」


 大好き……か。

 わたしはもう天界には戻れないだろう。

 今は肉体がヴォジャノーイ族の身体だからな……

 死んでも冥界には行けないはずだ。

 消滅……か。

 ペルセポネは……今頃天界で幸せに暮らしているのだろうか。

 ザクロを食べたからまだ冥界にいるのだろうか。

 もう既にわたしの事など忘れて他の誰かと……

 ……考えても無駄か。

 もう二度と会う事は無いだろう。

 

 甥を一人残して死ぬわけにはいかない。

 この子はわたしを頼ってくれる唯一の家族なのだから。

 

「……そうか。それならば……魔王をすげ替えるか」


「……え? 伯父上が……魔王になるのですか?」


「いや。魔王の座に興味は無い」


 わたしが種族王をしているのは甥を生かす為だからな。

 いつかわたしが天界に帰った後にも甥が生き残れるようにと……

 だから別にやりたくて種族王をしているわけではない。

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