ゴンザレスとの内緒話~後編~
(……ぺるみ様は全てを知りたいとは思わないんですか?)
うーん。
知らなくていい事は無理に知らなくてもいいと思うんだよ。
(……ぺるみ様は……変わっていますね)
ん?
そうかな?
(普通は全てを知りたいと思うものです)
全てを知ってもその真実に耐えられる心がないといけないでしょ?
わたしの心はそれほど強くはないからね。
(それが一番賢い生き方なのかもしれませんね)
ゴンザレスは大丈夫?
もう心は辛くない?
(……ぺるみ様……はい。ありがとうございます。ぺるみ様は……今まで出会った他種族の中で一番優しいです)
え?
そうかな?
(そして……一番不思議です)
不思議?
(はい。欲が無いといいますか……あまり周りに興味が無い……? といいますか)
周りに興味が無い……か。
それも……あるかもしれないね。
(え?)
あぁ……
いや、わたしはペルセポネの時はファルズフにずっと抑圧されていて自分の意思を表に出せなくて……
月海の時は集落から追い出されないようにずっとビクビクしていて。
ルゥの時は魔族と人間の種族の違いに苦しんで、ルゥの身体を奪い取った事に悩んで……
だからかな?
多くを知りたくないっていうか……
知らなくてもいい事は知らないで生きたいと思うようになったの。
知っても辛いだけだから……
(ぺるみ様……)
呆れちゃうよね……
(そんな事はありません。いつも笑顔のぺるみ様からは想像できなくて……)
……わたしは……いつも誰かの顔色をうかがいながら生きてきたの。
ずっとずっと……
そうやって生きてきたから……
今みたいに心から笑えるようになれて幸せだよ?
(……ぺるみ様……そうですね。今のぺるみ様はとても幸せそうです)
えへへ。
ゴンザレスも幸せそうで良かったよ。
長い時を経て……
今のわたしは心から笑えるようになったんだね。
(ぺるみ様……どの傘下にも入らない種族に狙われているのは……王子達だけではありません)
わたしも狙われているの?
(本当に愚かな奴らです。神の娘であるぺるみ様を亡き者にすれば天族と魔族との戦が始まります。それを望んでいるんですよ)
……?
どうして?
こんな言い方は……良くないけど、魔族と天族じゃ強さが違い過ぎるよ。
(はい。その通りです。我々はヘラ様やヘスティア様の火干しを何度も見ていますから天族の強さを知っています。ですが、どの傘下にも入らない種族は悪意がある為にこの第三地区や幸せの島の中を覗く事ができません)
なるほど。
結界が張ってあるから……
天族の強さを知らないんだね。
(はい。あの魔族達も我らゲイザー族と同じで他種族とあまり交わらずに過ごしてきました。遥か昔には交わった事もあったようですが……だから、他の魔族よりも魔力が強いんです)
だから、天族に勝てると思っているんだね。
(……はい)
この事はお父さんは知らないんだね。
知っていたら、わたしに王子達をサポートして欲しいなんて言うはずがないよ。
(ヨシダさんが……黙っているようにと……)
そう。
吉田のおじいちゃんにも考えがあるんだろうね。
わたし……
王子達と頑張ってみるよ。
(無理だけはしないでください。あいつらがぺるみ様に勝てるとも思いませんが……)
わたしの望む『魔族と人間が仲良く暮らす世界』を実現させる為に、これは避けては通れない問題なんだ。
ゴンザレス……
色々教えてくれてありがとう。
一つ解決するとまた新たな問題が見えてくる……か。
その問題を一つずつ解決していったらこの世界はどんな風になっているのかな?
 




