秘密のミッションスタート(1)
露店商市場から第三地区に帰ってくると人間の姿のグリフォン王が震え始める。
あぁ……
目の前にいるお母さんが怖いんだね。
でも、穏やかな表情だし怒っているようには見えないけどな。
「は……母上……あの……」
……グリフォン王は顔が真っ青だよ。
冷や汗もすごいし大丈夫かな?
「グリフォン王……アカデミーはどうでしたか?」
お母さんが穏やかな声で話しているけど、隣にいるつがいになったグリフォンのお兄ちゃんはビクビクしているね。
そんなに怖くは見えないけどな……
「は……はい。あの……アカデミーでした」
ん?
グリフォン王?
『アカデミーでした』って……?
怖くてまともに話せないみたいだね。
『母上怖い』とか言っちゃったしね。
「……アカデミーでしょうね」
おぉ……
お母さんが呆れているね。
「は……はい。アカデミーでした」
「「……」」
この母子の会話は一体……?
「はは。グリフォン王、お疲れ様。初アカデミーはどうだったかな?」
あ、お父さんが魔王城から来てくれたね。
「魔王様……その……疲れました……」
……ずっとお母さんに水晶で見られていたからね。
それは疲れるよね。
「とりあえず、グリフォン王は人化を解いて……と。よし。うーん。かなり疲れたみたいだね。温泉の島にでも行ってきたら? ベリス王子とイフリート王子もお疲れ様。三人でゆっくり温泉に入ってきたらどうかな?」
ん?
お父さんは三人に聞かれたくない話でもあるのかな?
「そうですね。では我々はゆっくり温泉にでも入りましょうか。グリフォン王もイフリート王子も行きましょう」
ベリス王子はお父さんが聞かせたくない話がある事に気づいたみたいだね。
三人が温泉の島に行くとお父さんがゆっくり話し始める。
「ぺるみ、お疲れ様。王子達はアカデミーに馴染めたみたいだね」
「うん。クラスの皆ともすぐに仲良くなっていたよ」
「水晶で見ていたんだけど……安心したよ。魔族は人間を食べるけど、王子達は我慢できたみたいだね」
「あぁ……そうだね。王子達は人間と同じ物を食べていたよ」
「……その事なんだけど。ぺるみにも聞いて欲しくてね。オークはぺるみが……ルゥが幸せの島に来てからの十五年近く肉を食べていなかったんだよ」
「うん。そうだったよね。ルゥを食べないように特大キャンディを食べたりしていたんだよね」
「うん……今はまた肉食に戻ったけどね。それで……種族王達に訊いてみたんだよ。傘下の魔族達の主食は何かってね」
「……! どうだったの?」
「遥か昔は肉のみを食べていたらしいんだけど……今では肉だけを食べる種族はいないらしいんだ」
「そうなの!?」
もしかして魔族が人間を食べなくなる日は近いんじゃないかな?




