自分が同じ立場にならないと分からない事もあるよね(2)
ゲイザー族長お願い、ハデスに伝えてきて。
わたしが解決するから今回は見ていて欲しいって。
(……)
族長?
あれ?
聞こえていないのかな?
って!
ちょっと待って!
ゴンザレスの振りをしているゲイザー族長のハリセンボンの姿の顔から雷が出てきた!?
かなりの魔力だよ!?
さすがにまずいよ!
貴族が死んじゃうよ!?
「うわあぁぁぁあ!」
……あぁ。
これは殺……
「お前……ルゥ様の兄上がどれほど人間を想っているのかも知らずに……」
ゲイザー族長!?
今まではうっすらしか感じなかったけど……闇の力がすごいよ!?
他の魔族からは魔力は感じても、闇の力は感じないのにどうして?
もしかして初代の神様だった吉田のおじいちゃんが直接創り出したオリジナルだから?
「うぅ……お前……え? 魚?」
あれ?
生きているみたいだね。
「雷の力を使えるお前はオレの……だから……お前の腐りきった根性を正すのはオレの役目だ」
族長?
……そうか。
この貴族は雷の力を使えるから、遥か昔にゲイザー族と人間との間に産まれた子孫なんだね。
じゃあ族長にとって大切な子孫のはず……
「は? 何を言って……」
「次は外さない。丸焦げになりたくなければリコリス王とここにいる平民に謝れ」
わざと外したんだね。
そうじゃなかったら生きてはいなかっただろうし。
「……は? ふざけるな。どうして謝らないといけないんだ? 少しくらい強い雷の力を使えるからって威張るなよ? 魚のくせに」
「……心が腐りきっているようだな。口先だけで謝らせてもダメなようだ。これ以上生き恥をさらすな。ここでお前の命を終わらせよう」
「は? 魚のくせに……っていうか……なんで魚が話して空に浮かんでるんだよ!?」
族長はこの貴族を本気で殺しちゃいそうだよ。
「ゲイ……ゴンザレス落ち着いて? ほら、あの……とりあえず冷静になって? ここで人間を殺すのはまずいよ」
「ですが……赦せないのです! ルゥ様の兄上を悪く言うなど……ルゥ様は我らにとって、とても大切なお方なのです」
「……それは……ありがたいけど……」
「お願いです。これ以上雷の力を持つ者からルゥ様の兄上の悪口を言わせたくないのです」
族長……
人間は知らないんだよ。
今、魔力を持つ人間は遥か昔に魔族との間に産まれた子の子孫だっていう事を。
「それは……そうですが……」
落ち着いて?
これ以上族長が話したらその事実を話しそうで怖いよ。
それが人間に知られたら魔女狩りみたいな事が起こりそうで……
「魔女狩り……?」
族長は魔女狩りを知らないんだね。
前の世界だけのものなのかな?
「ゴンザレス? どうしちゃったんだよ……確かにその貴族の人間は酷い奴だけど……さっきから一人で何を話してるんだ?」
ベリアルがいつもと違うゴンザレスの様子に心配しているみたいだね。
「あ……」
族長が少し冷静になったみたいだ。
考えている事を口に出している事に気づいたんだね。
「魔女狩り……? ってなんだ?」
ベリアルが族長に尋ねているけど……
この世界には魔女はいないみたいだし族長には分からないよね。
「それは……わたしから話すよ。貴族も黙って聞いてね」
「は? なんでオレが平民なんかに命令されないといけないんだ!」
この貴族は本当にダメだね。




