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虐げられる側と虐げる側……か

(ぺるみ様……貴族ですよ?)


 え?

 ゴンザレスの振りをしているゲイザー族長が教えてくれたけど……


(魔術科の貴族ですよ。ほら、静電気程度の雷の力を持つという)


 あぁ。

 魔術科の皆が話していた人間か。


(……魔術科の平民は良い人間ばかりです。心も清らかで……でも、あの貴族はダメですね)


 ダメ?


(自分以外は生きる価値も無いと思っているようです)


 ……典型的なお貴族様っていう事?


(はい。そうですね。今も平民をバカにしに来たようですよ? 魔力の無い貴族の事もバカにしているようですね。ゴミ程度にしか思っていませんよ)


 クソヤローが……


(え?)


 え?

 あ、ごめんごめん。

 口が悪かったね。


(はは。ベリアルからの教えでしたね)


 え?

 何が?


(『クソヤロー』ですよ。遥か昔天界でベリアルがペルセポネ様に教えたらしいですね)


 ベリアルが?


(天界でペルセポネ様だった頃はファルズフ? の薬で朦朧もうろうとしていたようですからね)


 ……?

 わたしに『クソヤロー』を教えてくれたのはベリアルだったの?

 ……確か馬の頭に体はキュウリで足が短くてしっぽがナスだったような気がしたんだけど。


(ベリアルが昔をそう思い出していましたからね。間違いはないはずですよ?)


 ベリアルが……

 そうだったんだね。

 馬の頭の天族じゃなかったんだね。


(え? ははは。ずいぶん朦朧としていたのですね。……それにしても不思議ですね)


 不思議?


(遥か昔にひとつだった魂が別々の身体になっていたなんて)


 ……そうだね。

 魂って不思議だね。

 わたしの魂も元はバニラちゃんだったけど今は別々になっているし。


(……それ以上魂について考えてはいけませんよ)


 族長……

 そうだね。


(あ……)


 え?

 どうかしたの?


(魔術科の貴族が平民達に話しかけていますね)


 ん?

 あ、確かに。


(……本当に愚かな貴族ですよ)


 族長?

 あの貴族は何かよくない事を考えているの?


(心から醜い者もいれば、心から優しい者もいる。でも……世界は恐ろしいのですよ。醜い心で溢れていて……)


 優しい人間の方が少ないっていう事?


(……優しい心は醜い心に侵食されやすいのです。優し過ぎる心は簡単に悪に染められてしまう……)


 染められてしまう?


(折られてしまう……といいますか)


 折られる……


(ぺるみ様のようなお方は大丈夫でしょうが、ここにいる人間の平民は心配ですね。酷く傷つけられて悪になったり、傷つき過ぎて心を壊さなければよいのですが)


 ……わたしは大丈夫ってどうしてなのかな?


(え? うーん。ぺるみ様には間違えた道に進みそうになったら全力で止めてくださる『家族』がたくさんいますから。それに、ぺるみ様は神の娘であり、魔王様の娘でもあり、人間の大国リコリスの王妹であり聖女でもあります。そんなぺるみ様を傷つける愚か者はそうはいませんよ?)


 ……権力のある愚か者が、いたぶるから弱者が悪になる?


(うーん。貴族は自分よりも地位の低い者を虐げる事により自分を虐げられなくするといいますか……)


 自分の変わりに誰かが虐げられていれば自分は他者から虐げられる事はないって安心できる……っていう事?


(……簡単に言えばそうですね。ですが……それは貴族にだけある事ではありません。平民の中にもあるのです。貴族に虐げられる自分以外の平民を見ながら自分にまわってこない事を願っている)


 ……地位が低いから声もあげられず、自分が虐げられないようにただ息を殺して生きている?


(結局、皆自分が一番かわいいですからね)


 虐げる側がいなくならないと終わらない……か。


(貴族は簡単には変われませんよ? それがこの『人間と魔族の世界』の歴史ですから)


 ……そうだね。

 悲しいけど……

 人間と魔族が仲良くなれたとしても、そういう強者と弱者の関係はあるんだろうね。

 

(オレが見た『魔族が人間に虐げられる世界』がきたら……結局オレもこの貴族と同じなのです。自分さえ無事なら……ゲイザー族さえ無事ならそれでいいと……)


 仕方ないよ。

 誰でも迫害なんてされたくないからね。

 ゲイザー族は皆、族長の子孫なんだし。


(かわいい子や孫やひ孫達を守りたいのです。ゲイザー族はオレを含めて五体しかいなくなってしまいました)


 族長が悲しそうに呟いたね。

 わたしまで苦しくなってきたよ。

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