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あなたは誰? (4)

「あぁ……いえ……」


 ベリス王子が悲しそうな顔をしているね。


「ベリス王子は……世界に感情があると思う?」


「……世界に感情?」


「……うん。誰かがわたしを幸せにする為に動いてくれていたんじゃないかって思うほど……いろんな出来事が複雑に絡み合いながら進んできたでしょう? バニラちゃんがそうなるようにしていたのかと思った事もあったけど、それも違ったし……」


「それで……世界がそうしたと?」


「壮大過ぎるかな?」


「……元々この『人間と魔族の世界』と『異世界』は存在していませんでした。その二つの世界は初代の神が創りだしたのです」


「……?」


 ベリス王子?


「花が……風に揺れると喜んでいるように見えるのも……乾いた土に雨が染み込むと木が喜んでいるように見えるのも。雨や風があるのは『世界』がこの世界に生きる全ての『もの』が喜ぶ姿を見たいから……」


「……ベリス王子? えっと……どうかしたの? わたしが変な事を言ったから?」


「……いえ。変な事はありませんよ。全ての事には意味があるのですから」


「意味がある?」


「はい。全ての事に意味があったからこそぺるみ様はペルセポネ様に戻れたのですから」


「……? そう……だね」


「きっと……」


「きっと?」


「きっと幸せな未来が待っていますよ。わたしにとっても、ぺるみ様にとっても」


「……え?」


「だから……難しく考えるのは、やめましょう。眉間にシワができてしまいますよ?」


「……! シワ?」


「はい。流れに身を任せながらのんびり問題を解決すれば良いのです。もうぺるみ様は人間ではないのですから」


「……そうだね。わたしは永遠に生き続けるんだね」


「忘れてはいけませんよ? 今、こうして人間と暮らす日々を……」


 やっぱり……

 変だよ。


「……あなた……本当にベリス王子なの?」


「……」


 ……?

 やっぱり何か変だよ。

 すごく悲しい瞳だし……


「ベリス王子?」


「はい? 何でしょう」


 ……あれ?

 いつものベリス王子みたいだね?

 作り笑顔が戻ったよ?


「えっと……」


「はい?」


 ……うーん。

『さっきまでの話を覚えている?』

 なんて訊いたら変だよね。


「うわあぁ! 火が出ました!」


 あ……

 ジャックは指の先から火が出たみたいだね。


「ペリドット様! ほら、見てください!」


 ジャックが嬉しそうに呼んでくれているね。


「うん! すごいね」


 ……さっきのベリス王子は少し変だった。

 気のせいかな?

 でも……

 流れに身を任せながらのんびり問題を解決する……か。

 確かにその通りだけど……


 バニラちゃん。

 聞こえる?


(ええ。聞こえるわよ? ふふ。全部筒抜けだから)


 そっか。

 あのさ……

 さっきのベリス王子の話だけど。


(ふふ。ゲイザー族の容姿が怖いからベリアルには見せない方がいいっていう話ね?)


 ……え?

 

(ベリアルは怖がりだから。ふふ。そんなところもかわいいわよね)


 ……あぁ。

 うん。


 ……?

 どういう事?

 わたしの考えている事は全部バニラちゃんに筒抜けのはずだよね?

 世界に関する話をしていたのに、その部分は聞こえていなかったみたいだ。


 怖い……

 身体が冷えていくのを感じる。

 わたしは……

 ベリス王子の身体を通して誰と話していたの?


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