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練乳を飲みたい(5)

「……何をしているのだ?」


 ハデスが練乳のチューブに吸いついているわたし達の姿に動揺している?

 確かにこのチューブの中に甘い練乳が入っているなんて分からないよね。


「あのね? この中に甘くて幸せになれる液体が入っているんだよ? 練乳っていうの。ハデスも吸ってみる?」


「甘くて幸せになれる液体? それは幻覚作用のある危ない物ではないのか?」


「え? 違うよ? 生クリームみたいな物だよ?」


「そうか? それならいいが。皆の様子がおかしいからな……」


 確かに、いつも賑やかな皆が無言で幸せそうに吸いついているからね。


「あ、そうだ。ウリエルにも持っていってあげたら喜ぶかも。疲れた時には甘い物だよね」


「あぁ……ウリエルはとりあえず今日から仕事復帰するようだ」


「じゃあ、昨日でフィギュア作りが終わったのかな?」


「そうだ。魔王様への贈り物を作らせていたのだ。嫌々だったが……交換条件でな」


 交換条件?

 

「もしかして、幼女時代のルゥの姿入りの映像石をあげる代わりにお父さんへの贈り物を作ってもらったの?」


「ペルセポネは映像石を知っていたのか。そうだ。魔王様にどうしても贈りたい物があってな」


「どうしても贈りたい物?」


「そうだ。見てみるか?」


 ハデスが嬉しそうに、冥界から持ってきた箱の中身を見せてくれる。


「これ……」


「ああ。おばあさんがグンマで魔王様と別れた頃の姿の人形と、ルミの赤ん坊の頃の姿の人形と、魔王様の人形だ。今は、おばあさんもルミも姿が変わったが……魔王様がずっとグンマにいればこの人形のように幸せに暮らしていたのかもしれないな」


「ハデス……わたし……勘違いしていたよ。恥ずかしい……」


 ダメだ。

 この幸せそうに笑うフィギュアを見たら涙が出てきちゃった。


「勘違い?」


 ハデスが涙を拭いてくれる。


「わたし……てっきりハデスが幼女好きになってウリエルに月海るみのフィギュアを作らせているんだと思って……自分が恥ずかしいよ」


「う……あぁ……いや……そうか……」


「怒った? 呆れちゃった? 本当にごめんなさい」


「え? あぁ……いや。謝らないでくれ。実は……ウリエルがルミの人形を作ったら、ひとつ譲ってもらう約束をしているのだ」


「……え?」


「弟達がルミの姿を知っていたのが悔しくて。すまない。呆れたか?」


「あ……そうだったんだね。呆れないよ? すごく嬉しいよ。ハデスが月海を大切に想っているのが分かって、すごく嬉しい!」


 ハデスに抱きつくと優しく抱きしめてくれる。

 そして……

 優しく口づけしてくれる。


「ふっ。甘いな。これがレンニュウか……」


「うん……」


「『ふっ。甘いな。これが練乳か。うん』だって! くぅぅ! ハデスちゃんのエッチ!」


 ……!?

 吉田のおじいちゃん!?

 恥ずかしいから真似しないでよ!

 これ以上ないくらいニヤニヤしているよ!?

 

「あああ! ハデスってば! ペルセポネはお父様の宝物さんなんだから、それ以上は許さないからね!」


 お父様……

 自分は好き勝手している女好きだよね……


「ところで、皆で練乳吸ってるけど、ぱーてーの準備は間に合うんか? チュウチュウ」


 吉田のおじいちゃんの言う通りだ!


「そうだよ! 急がないと!」


 お父さんの誕生日の宴を絶対に大成功させたいんだ。

 よーし!

 練乳を吸って元気も出たし、頑張るぞ!


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