あなたは誰? (1)
「火の力なら……えっと……赤き殿下だっけ? に教えてもらったらどうかな?」
確か、イフリート王子は赤き殿下って呼ばれていたよね?
「え? 赤き殿下……ですか?」
ジャックは同じクラスじゃないから分からないよね。
「うん。火の魔術が得意なんだよ?」
「うわあぁ! あの……どなたが赤き殿下なんですか?」
「オレ……だけど。お前は火の魔力があるんだな。確かに体内に少し火の魔力を感じるな」
さすが火の魔力を使う魔族のイフリート王子だね。
火の魔力を感じられるんだ。
「……! オレの体内に火の魔力が……! あの……迷惑でなければ教えてもらえませんか?」
「いいぞ? でも……まだ火が使えていないんじゃないか?」
「はい。どうしても火が出てこなくて。身体から火が出てくるなんて少し怖いし……」
「大丈夫だ。自分の魔術で怪我なんかしないからな。そうだな……まずは……人差し指の先に意識を集中するんだ。そこが熱くなってきたらすぐに火が出てくるぞ? ろうそくを想像してみろ」
「すぐに!? はいっ! 頑張ります!」
イフリート王子は面倒見がいいんだね。
人間相手に優しく教えているよ。
「……不思議ですねぇ」
ベリス王子が小声で話しかけてきたね。
「不思議?」
「はい。人間は魔族の食糧ですからねぇ。こんな風に共に勉学に励む事になるとは……」
「ベリス王子はベリス王と一緒に人間相手の商売をしているの?」
「いえ。大国にあるのは父の店舗ですから。わたしは大国以外で人間相手に小さな商売をしています」
「そっか。あのさ……ベリス王子は人間を……食べるでしょう? でも……食糧である人間を相手に商売をするってどんな感じなのかな?」
「そうですねぇ。我らベリス族は……まぁ、人間も食べますがそれ以外も食べますからねぇ。遥か昔は人間だけを食べていたようですが今はそんな種族も少ないようですよ?」
「……ゲイザー族だけじゃなかったんだね」
「ゲイザー族? ああ、反乱を起こしたあの種族ですね。容姿がかなり変わっていて驚きました」
「わたしも本でしか見た事がないからよく分からないけど……実際の容姿はかなり怖いみたいだね」
「そうですねぇ。黒い闇が具現化してそこに恐ろしい瞳が一つある……あぁ、触手の先にも瞳がありましたか? そんな感じですねぇ。ベリアルには見せない方がいいでしょう」
「ベリアルは怖がりだからね」
「……」
「ベリス王子?」
いつもの作り笑顔が無表情になっている?
「……遥か昔……初代の神に捨てられた子……」
……?
いつもと感じが違うね。
「……そうだね」
「ぺるみ様は……バニラ様が復讐をやめたと思っているのですか?」
「……わたしの心はバニラちゃんに筒抜けなんだって。だから、わたしが何を考えているのか全部分かっているみたいなの。でも、わたしにはバニラちゃんが何を考えているのかは分からないんだ」
「……そう……ですか」
ベリス王子……?
やっぱりいつもと違うよ?




