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厳しい身分制度の中で~前編~

「あの……はじめまして。ペリドット様、ヒヨコ様。あの、昨日まではなかなか時間が合わなくて。ジャックです」


 初めて見る男の子だね。


「はじめまして。あなたもジャックなんだね。何属性なのかな?」


「はい。オレは火属性です。いずれは魔塔に行きたいと思っています」


「魔塔に? すごいね。確か魔塔は魔法石に火とか水とかの魔力を入れたりしているんだよね?」


「はい。でも……なかなか上手くいかなくて。最近までは風属性だって言われていたんです」


「なるほど。神殿の検査が間違えていたんだね」


「はい……それで……火の力の使い方を教えて欲しくて」


「もちろんだよ」


「ありがとうございます。オレ……魔力はあるのにずっと力が使えなくて……今までは魔塔に行くって言ったら恥ずかしいと思っていたんです。力も使えないのにバカみたいだって。でも……ペリドット様の話をジャック達から聞いて」


「わたしの話?」


「他人の夢を笑う奴は赦さないって」


「ふふ。そうだよ? 頑張っている皆の事をバカにするなんて絶対に赦せないよ」


「でも、魔塔に行くには『四大国のアカデミー魔術科対抗魔術戦』に出場しないといけなくて」


「え? そうなの?」


「そこで魔塔の目に留まれば……」


「魔力があれば誰でも行けるわけじゃないんだね」


「はい。入塔の試験が数年に一度しかなくて。だから『四大国のアカデミー魔術科対抗魔術戦』に出場できればと」


「なるほど。ちなみに魔術戦にはアカデミーから何人出られるのかな?」


「五人なんです」


「五人? それって……わたしは出場しない方がいいんじゃないかな? 魔塔に行くチャンスなのに一人分枠が減っちゃうでしょ?」


「他にも魔塔に行きたい学生はいるんだよね?」


「え? でも……ペリドット様が出場しないと勝てないんじゃ……」


「勝敗も大切だけど一番重要なのは皆の将来だよ? 学長もきっとそう思ってくれるよ」


「……でも……あの……今、魔術科には貴族が三人いて」


「三人もいるんだね」


「はい。だから平民からはあと二人しか出られなくて」


「ん? どうして貴族が三人出る事が決まっているの?」


「え? それは……貴族だから」


「貴族だから? えっと……その三人は強いの?」


「え? あの……一人は……静電気をビリビリさせる事ができます。あとの二人は属性検査が間違えていて、今は魔術は使えませんけど……貴族だから魔塔から魔術の使い方を教えてくれる人を呼ぶって言っていました」


「ふぅん。魔塔からねぇ。かなりの額を払うんだろうね」


「はい。オレ達は平民だから……そんなのは無理だから……」


「……平民だからそんな事はできないだろうってバカにされたの?」


「……はい」


「はぁ……典型的なお貴族様だね」


「……ペリドット様は王族なのにどうしてオレ達平民をバカにしないんですか?」


「……わたしには平民だからってバカにする方が信じられないよ。ニホンは皆が平等だから」


「皆が……平等?」


「うん。えっと……確かに王族はいるけど国民の象徴だから」


「象徴?」


「うーん。説明すると難しいんだけど……ニホンでは皆が同じだけ偉くて同じだけ豊かに暮らす権利があるの。貴族とかいう身分がないんだよ」


「貴族がいない? 皆、平民なんですか? 王族以外は皆平民なんですか?」


「うん。そうだよ?」


「夢みたいな国だ……」


 夢みたい……か。

 この厳しい身分制度のある世界からしてみれば夢みたいなのかな?

 

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