この世界がわたしの願いを叶えようとしているの? (3)
(子孫繁栄の実は形に残る物だったから今も続いているけれど、目に見えない理は始めから拒絶されていた。……この世界はウラノスを嫌っていたのかもしれないわね。息子を捨てる為に創られた世界……誰かに愛を与える為に創られたわけではない世界。この世界に優しい感情があるのなら……きっと辛かったはずよ。あ……もしかしたら子孫繁栄の実の存在はこの世界に認められたから今も残っているのかしら? あの実は人間に無理矢理、子を授からせない為の物だから……)
バニラちゃん……?
この世界は、おじいちゃんを嫌っているの?
じゃあ……
どうしてわたしは認められたの?
(……ウラノスよりも……この世界にふさわしいと認められたのではないかしら?)
……?
それって?
(上位精霊達はオケアノスを殺す為に創られた。でも、オケアノスを愛していたわ? この世界もそうだったのではないかしら?)
世界が感情を持っている?
(群馬にいた頃……おばあさんだったガイアがよく言っていたわね。物を大切にしなさいって……)
……?
うん。
そうだったけど……
(全ての物に気持ちがあるわ? 生き物だけではなく……花や水、木や風にさえ)
水や風にも?
(……ペルセポネ。あなたが思う以上にこの世界は生き物に溢れているの)
……全ての物が生きている?
(世界がペルセポネを愛したのにはきっと意味があるはずよ? 優しいだけの生き物なら今までもいたはずだし……『ペルセポネの始まりの魂』はウラノスとガイアの息子であるオケアノスだった。そして、ベリアルの感情が抜き取られ残ったわたしの魂はペルセポネの身体に入れ込まれた。その時、ペルセポネには他の魂は入っていなかった)
……?
他の魂……?
……うん。
わたしには魂が無かったんだよね。
(『天界という世界』はペルセポネを守ろうとはしなかった。だからファルズフに酷い目に遭わされ続けていた。天界はペルセポネの願いを叶えようとはしていなかった。そして、ペルセポネはファルズフに殺されて、今度は群馬で月海の身体に魂を入れ込まれた)
天界……?
……!
まさか……あの時の……
(群馬では大天使に魔素で攻撃されて、結局ゼウスに溺死させられて……そしてこの『人間と魔族の世界』に来た。それからは、色々あったけれど幸せに暮らしていたはずよ? この世界に守られながら……)
……バニラちゃん。
ちょっと違うかもしれない。
(え? ペルセポネ?)
天界は……わたしの願いを叶えてくれたの。
それと……たぶんだけど……
異世界も……
群馬のあったあの世界もわたしをこの『人間と魔族の世界』に逃がしてくれたんだよ。
(……? どういう事?)
今、分かったの。
声に出さないと世界には伝わらないって。
心の中で思っただけだとダメなの。
天界ではわたしはずっとファルズフに押さえつけられていて声に出して抗う事が無かった。
でも……あの時……ハデスが冥界に連れ去る直前に……わたしは声に出したの。
『ファルズフから逃げたい。ここではないどこかに誰か連れ去って』
そんな感じだったと思う……そしてすぐにわたしは冥界に連れ去られた。
(……! そうだったのね。わたしはペルセポネの魂の奥深くにいたからその頃の事は記憶が曖昧なのよ)




