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練乳を飲みたい(4)

「えへへ。レンニュウだ。レンニュウだぁ! ほら、ケルベロス達の分もあるぞ!」


 ご機嫌のベリアルと、ぐったりしたお父様が第三地区に空間移動してくる。


「はぁ……まだ……朝の七時だよ? 村にひとつしかないスーパーは開いてないしコンビニには数が足りなくて……大変だったんだから……ふああぁぁ……眠いっ」


「お父様、ありがとう。こんなにいっぱい買ってきてくれたんだね!」


「ペルセポネも欲しがってるって聞いたから町まで行って買ってきたんだよ? はい、月海るみの時は練乳大好きだったよね! ついでに抹茶シロップとイチゴシロップも買ってきちゃった」


「うわあぁ! さすがお父様だね! ちょうどかき氷を食べたかったの!」


「お父様にもイチゴ練乳のかき氷作って欲しいなぁ」


「うん! たっぷり練乳をかけるからね! 村にひとつのスーパーって……確かふたつあったはずだけど?」


「あぁ……つぶれたみたいだね。コンビニは今は村に三つあるけど、集落には無いよ?」


「わたしが最後にいた時から集落は変わっていないんだね……」


「そうだね。元々お年寄りの多い村だったからね。でも今は月海の同級生達が村の活性化の為に頑張っているみたいだよ?」


「そうだね……三十一歳だからね。わたしの気持ちは高校二年生で止まっているけど……皆もう大人になったんだね」


「ちゃんと卒業したかったよね? ごめんね?」


「お父様のせいじゃないよ? それにね? 今はたくさんの家族に囲まれて幸せだよ?」


「ペルセポネ……」


「ところで……お父様もばあばもおじいちゃんも群馬でお金はどうしているの? まさか泥棒とかしていないよね?」


「……え? あはは。大丈夫だよ?」


「田中のおじいちゃんだった時も、やたら高いビデオカメラとか持っていたよね? 年金暮らしだって言っていたけど住民票とか戸籍とかどうなっていたの? 今だってばあばとおじいちゃんは群馬に住民票があるわけじゃないし戸籍だって無いよね? 普通に住んでいるけど平気なのかな?」


「ペルセポネ……その辺はぼんやりさせてもいいんじゃないかな?」


「ぼんやり……?」


「そうだよ……深く考えないで? あと、泥棒はしてないから大丈夫だよ?」


「本当?」


「うん。だから、これからもたくさん食べ物を買ってくるからね?」


 泥棒じゃないなら良かったよ。

 でも、教えてはくれないんだね。


「「「チュウチュウ」」」


 ん?

 何の音?


 ……!?

 そんな!

 ベリアルと冥界のケルベロスが練乳のチューブを吸っている!?

 しかも、第三地区の皆まで!?

 皆、幸せそうな顔をしているよ……

 お父様は町の練乳を買い占めてきたのかな?

 

「いやぁ! 血糖値を気にしなくていいから吸い放題だなぁ! あはは」


 ええ!?

 おばあちゃんまで!?

 そんな……

 絶対怒られると思っていたのに……

 わたしもいいの?

 いいんだね?

 ついに夢が叶うんだ!


 やったぁ!

 練乳のチューブに吸いついても怒られないなんて!

 異世界最高っ!


 あぁ……

 甘くて幸せだよぉ。


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