この世界がわたしの願いを叶えようとしているの? (1)
「どうしよう。土の力で家族を養おうとしていたのに」
あ、土属性のジャックだね。
マリーちゃんとジャックの風の力だけじゃなくて、土の力も使えなくなったの?
もしかしてアカデミーにいる人間達の魔力が使えなくなったとか?
でも、どうして突然?
……そういえばゲイザー族長が言っていたよね。
この世界がわたしを幸せへと導こうとしているって。
さっきわたしが『人間は魔力を持つべきじゃない』って言ったから?
でも、それは今すぐにじゃなくてゆっくり時間をかけながら魔力を持たなくなるっていう意味で……
もし族長の言った事が真実なら……
わたしの願いを世界が叶えようとしているっていう事?
じゃあ、わたしが『人間は魔力を持つべきだ』って考えたらこの世界が人間に魔力を持たせるの?
……それって……わたしが危ない事を考えたらこの世界がそれを叶えようとして大変な事になるんじゃ?
とりあえず落ち着こう。
まずは試してみるんだよ。
心の中で思ってみよう。
『マリーちゃんとジャックは風の力を前と同じように使えるようになる』
あ、でも、これだとジャックは大勢いるから……
『ここにいる風属性のマリーちゃんとジャックは風の力を前と同じように使えるようになる』
……どうかな?
うーん。
まだ魔力は戻らないみたいだね。
わたしの勘違いだったのかな?
……もしかして、声に出す……とか?
試してみよう。
「ここいる風属性のマリーちゃんとジャックは風の力を前と同じように使えるようになる」
……どうかな?
「……? ぺるみ様?」
ベリス王子がいきなり呟きだしたわたしを見つめているね。
「あ、良かった。風がでたよ。今のがペリドット様が言った『魔力切れ』なのかな?」
「そうみたいだな。はぁ……次からは気をつけよう」
マリーちゃんとジャックに風の力が戻った!?
嘘……
他の皆は?
……まだ力が戻らないみたいだね。
まさか……
本当にこの世界がわたしの願いを叶えようとしているの?
「……わたしがさっき魔力を消した人間に全く同じ力を戻す」
これでどうかな?
もし、これで力が戻れば本当にわたしがこの世界にやらせた事になるよ?
「あ! 良かった。土の力が戻った……無理をし過ぎちゃったのかも。少し休憩しよう」
……!?
ジャックは力が戻ったの!?
……待って!?
じゃあ本当にこの世界がわたしの願いを叶えたっていうの!?
どうして……?
いや、まだ偶然が重なっただけかも……
(……あの、ぺるみ様……どう考えても偶然のはずがありませんよ)
族長!?
聞いていたんだね。
(ベリス王子も気づいたようですよ? 堪が鋭いですからね)
……面倒な人に気づかれちゃったね。




