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練乳を飲みたい(3)

「ベリアル……羨ましい。わたしもペルセポネ様に吸われたい……」


 冥界のケルベロスが羨ましそうに呟いているね。


「あはは。ケルベロスも味見の手伝いをしてくれるんか?」


 おばあちゃんがマフィンを運びながら話しかけてきたね。


「これは、おばあ様。いつも、おいしいお菓子をありがとうございます」


「ケルベロスは毎日仕事を頑張っているって、ぺるみが教えてくれてなぁ。甘い物を食べると元気が出るからなぁ。群馬にいる頃は月海るみによくお菓子を作ってたんだ」


「ペルセポネ様は、グンマでは元気が無かったんですか?」


「うーん……普段は元気だったけどなぁ。親もいなかったし……ばあちゃんも夢遊病でなぁ。小さい頃から心の休まる暇が無かったんだ。それを口に出さねぇで一人で抱え込ませちまってなぁ」


「そうだったんですか……」


「ぺるみが……心が弱ってるのは群馬にいた頃からなんだ。ばあちゃんは群馬じゃ小さい月海に守られてたんだ。悪い事をしちまった。だから今度は……守ってやるんだ。氷の力で……今度こそなぁ」


「おばあ様……わたしもペルセポネ様をお守りします!」


「そうか、そうか。ありがとなぁ。ほら、マフィンを食べろ?」


「うわあぁ! おいしそうです。これは……! すごくおいしいです」

「うん! 旨い!」

「あぁ……最高だ!」


「そうか? そりゃあ良かった。あはは」


「そういえば、ペルセポネ様がレンニュウという飲み物がおいしいと教えてくださいました」


「ん? 練乳が飲み物? ははは! あれは、かける物だぞ? まぁ吸いつきたくなるくらい旨いけどなぁ」

 

「そんなにおいしいのか……飲んでみたい……ゴクッ」



「全く……ぺるみからやっと逃げられた。ん? ケルベロス? どうしたんだ?」


 あれ?

 わたしの腕から抜け出したベリアルが、ケルベロスと話しているね。

 おばあちゃんとケルベロスは何の話をしていたのかな?


「あぁ……レンニュウを飲みたくて……」


 昨日の練乳の話をしていたのか。

 ケルベロスはよっぽど練乳を飲みたいんだね。

 わたしも飲みたいよ。

 チューブに吸いつきたいよ。


「レンニュウ? なんだ? それ? ばあちゃん、それは旨いのか?」


 うわあぁ!

 ベリアルがつぶらな瞳を輝かせているね。

 かわいい!


「甘くてなぁ。幸せな気持ちになるぞ?」 


 おばあちゃんも練乳をかけたイチゴが好きだったからね。


「甘くて幸せ!? そんな物があったなんて知らなかった!」


 わたしもベリアルが、こんなに喜ぶなんて知らなかったよ。

 もっと早く教えてあげたかった!


「おい! ぺるみ! どうして教えてくれなかったんだよ!?」


 あぁ……

 かわいいヒヨコちゃんがわたしに怒っているよ。

 くぅぅ!

 堪らないね!


「……ベリアル。練乳は危険な飲み物なんだよ……あの味を知ってしまうと、もう欲望を止める事は不可能になるの!」


 チューブに吸いつきたくなっちゃうんだよ!

 おばあちゃんが怒るだろうからやらなかったけど。

 練乳のチューブに吸いついて飲み干したいって思うのはわたしだけじゃないはずだよ?


「今すぐ……今すぐグンマに行くぞ!」  


 おお!

 ベリアルの頭の中が練乳でいっぱいになっているね。

 でも……


「待って! ベリアル! 練乳がなんだか知らないでしょ? お父様なら知っているから持ってきてもらおう?」


「うぅ……今すぐ飲みたいのに! そうだ! 天界に行ってゼウスに頼んでくる!」


「え? まだ寝ているんじゃないかな? あ、ベリアル!? 行っちゃった……」


 そういえば、ベリアルはお父様を神じゃなくてゼウスって呼ぶんだね。

 お母様の事も様をつけないし……

 昔からそうだったのかな?

 ベリアルと話した事が一度だけあったらしいけどファルズフの薬でぼんやりして覚えていないんだよね。

 まさか……

 神の一族を呼び捨てにして追放されたとか!?

 さすがに、それはないか。


 お父様は、あれでも神様だけど使い走りみたいな事をさせて大丈夫なのかな?

 ……あ、わたしも練乳を持ってこさせようとしていたね。

 空間移動の仕方を練習して自分で行けるようになりたいな。

 いつまでも、お父様に取りに行ってもらうのは申し訳ないからね。

 ……でも、月海として亡くなったのに、そのわたしが群馬に行くのは良くないんじゃないかな。

 人間は亡くなったら天族みたいに死後の世界があるわけじゃないし。

 ……やっぱりわたしは群馬には行かない方がいいのかも。

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