何が真実かは分からないけど……これが真実なら辛過ぎるよ(4)
(ぺるみ様……未来は変わります。ですが変わらない未来の方が遥かに多いのです)
……族長は未来を変えようとしたんだね。
(……はい。……でもダメでした。一番守りたかったゲイザー族の仲間を守りきれなかった。それからは未来を見る事をやめました)
……そう。
(ですが、やめようとしても無意識に夢で見てしまって……)
……え?
(そこで見てしまったのです。遥か未来に……魔族が人間を食べなくなり逆に人間に虐げられる未来を……)
夢で……?
(確かに、魔族は人間を食べますが……それは酷い事かもしれませんが……オレは魔族ですから……同族が虐げられる姿なんて見たくはなかった……)
……その未来に……わたしはいたの?
(……え?)
かなり前に見た夢なんじゃないかな?
(……それは……はい。かなり前ですが……)
わたしがまだオケアノスとしてこの世界にいた頃か……天界でペルセポネとして暮らしていた頃……?
魂だけが群馬にいた頃かもしれないよね。
(ぺるみ様?)
その未来……変えてみない?
(え?)
もしかしたらもうすでに変わっているかもしれないけど。
(……すでに……変わっている?)
族長……
もう未来なんて見たくないよね。
すごくすごく怖かったね。
(ぺるみ様?)
わたしは……お兄様が結婚したらもう人間と深く関わらないつもりだよ?
ジャックの食堂に一度行って……お兄様とおばあ様の……最期に会いに行くくらいだよ?
でも……
わたしは遥か未来にも、幸せの島と第三地区にいるはずだよ?
第三地区にはおばあちゃん達がいて、幸せの島はルゥとして暮らしていた大切な島なの。
だから、冥界と天界とこの世界を行ったり来たりしていると思うんだ。
(ぺるみ様……)
人間と魔族が仲良く暮らす世界……
遥か未来に魔族が人間を食べなくなって、人間と助け合いながら暮らす世界……
(そんなの……無理です……)
まだずっと先の未来の話だよ?
魔族が人間を食べなくなるなんてかなりの時間がかかるはずだから。
でも……
もし『魔族』とか『人間』とかの言葉がなくなるくらい仲良くなれたら……
すごくすごく嬉しいよ……
(……オレは恐ろしいのです。確かにオレはずっと人間を食べてきました。でも……魔族が……今度は人間じゃなくて弱い魔族を食べるべきだと言ったのを聞いた時……初めて食べられる側の気持ちが分かったのです。ゲイザー族は弱いから真っ先に狙われると思ったのです)
……族長。
(でも……怖くて未来を見られなくて。もし……皆が食べられている姿を見てしまったらと……)
一緒に……未来を作ろう?
(……ぺるみ様?)
ずっと思っていたの。
魔族と人間が仲良く暮らせる世界になったらって。
(そんなに簡単な事ではありません……)
分かっているよ?
だからわたしも無理なんだろうなって思っていたの。
でも……
(でも……?)
今までだって絶対に無理だって思っていた事を乗り越えてきたの。
やる前から諦めたら何も始まらないよ!
(ぺるみ様……)
わたし達二人だけじゃ乗り越えられない高い壁だったとしても、きっと皆が知恵を与えてくれるはずだよ?
実際、第三地区では魔族も人間も仲良く過ごしているんだから絶対に無理なんて事はないはずだし。
第三地区の人間は群馬での魂を入れた創り物の身体だけど……




