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大声大会とクリームブリュレ(3)

「え? つるん?」


 ジャックが首を傾げているね。


「うん。いつものヒヨコちゃんには寝癖があるでしょう? 今日なんてツインテールになっていたし……ぐふふ。堪らないね」


「なるほど。ツインテールのヒヨコ様を捜せばいいんですね?」


「でも……他のヒヨコちゃん達がずっと動いているからなかなか見つけられないんだよ。困ったなぁ……」


「あ、じゃあお菓子で誘き寄せたらどうですか?」


「……! ジャックは天才だね!」


「えへへ。そうですかね?」


「よし。じゃあ、大声大会の四位の商品のマフィンを使うか?」


 え?

 おばあちゃん?

 

「でも、それだと四位の人がかわいそうだよ。おばあちゃんのマフィンを食べたいはずだし」


「安心しろ。四位はぺるみだからなぁ」


「え? わたしが四位なの? 結構大きい声だったはずだけど……」


「ヒヨコちゃんを大量発生させた罰だ。これからは気をつけるんだぞ?」


「え? これからもこんな事があるの!?」


 ぐふふ。

 ヒヨコちゃんパラダイスだよ!


「こら。ぺるみには危機感ってもんが足りねぇなぁ」


 え?

 危機感?


(ぺるみ様、おばあ様の言う通りですよ? 魂がないのに動き回っているようですし。こんな事はあり得ません)


 ゴンザレス?

 魂がないのに動き回っている?

 ……深く考えていなかったよ。

 確かに魂がないのに動くなんて変だよね。

 あまりのかわいさに何も考えずに受け入れちゃっていたよ。

 どうやって動いているのかな?


「これだなぁ」


 ん?

 これ?

 吉田のおじいちゃんが青いヒヨコちゃんを掴まえてひっくり返しているね。

 

「これって何?」


「電池だ」


「電池?」


「前の世界で使っていたやつだなぁ」


「……あ、本当だ」


 単四かな?


「ぺるぺる……これは良くねぇなぁ」


『これは良くない』?

 あ……

 そうか。

 この世界には電池はないんだ。

 ……前の世界は確かに暮らしやすかったけど……自然は破壊されて温暖化して……異常気象で洪水が起きたり火事になったり。

 暮らしを豊かにする為に『世界』に無理をさせ過ぎて限界だったよね。

 人間は自然の力の前では無力だった。

 前にいたあの世界はあと何年持ちこたえられるんだろう……

 わたしがこの世界に電池を持ち込んだら、文明が発展してこの世界もいずれそうなる?

 ダメだよ。

 豊かに暮らしたいからって前の世界の物を持ち込んだらダメだ。

 

『この世界』も『前の世界』も吉田のおじいちゃんが創り出したけど全く違う世界になった。

 この世界は人間と魔族がいて、人間は魔族に食べられはするけど防御の為の武器は大砲とか剣とかくらいだ。

 魔力も弱くなってきているし……


 前の世界はすごく暮らしやすかったけど……

 恐ろしい大量破壊兵器や異常気象。

 年々暑くなって……

 皆が思っていたはずだよ。

 そのうち、ここには住めなくなるって……

 でも、豊かな暮らしを変えられなくて。

 そうやって……

 向こうの世界は滅びていくのかな?

 吉田のおじいちゃんが息子さんの為に……

 この世界の魔素に苦しむ息子さんが楽に暮らせるように創った世界は……

 破滅への道を進んでいるんだ。

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