変態はとめられないんだよ
「ペリドット様、お知り合いなんですか?」
ベリアルを抱っこしている前の席のジャックが尋ねてきたけど……
「え? えっと……」
何て話したらいいんだろう?
「ふふ。わたしから話すわ」
わたしの机の上にいたバニラちゃんが話し始めたね。
「ぺるみとこの三人の王子は魔素に閉ざされて地図に載っていない国同士交流があったの。ぺるみが大国リコリスに勉強に来ていると聞いて他国の王達も息子を行かせたいと思ったんでしょうね。まぁ社会勉強ね」
それらしい理由をつけたね。
「……そうだぞ? 知らなかったのはぺるみだけだ」
え?
ベリアルは聞いていたの?
「何で!? わたしだけ聞かされていなかったの!?」
「そうだ。ぺるみの慌てる姿を見るのはおもしろいな。あはは」
「日頃の恨みを晴らしているんだね……すごく楽しそうだよ」
「だって、おもしろいからな! たまには仕返ししないとな」
「うぅ……いいよ。また後で吸うから。ツインテールの間に顔をうずめて吸うから……」
「はあ!? まともにならないとノートに書かれて恥をかくのはぺるみだぞ?」
「うぅ……」
でも、後でこっそり盗んじゃうから平気なんだよっ!
(ぺるみ様……それは犯罪ですよ?)
……ゴンザレス、聞いちゃったんだね。
(……それは犯罪ですよ)
うぅ……
だって、聖女が変態なんて……
後世に残すわけにはいかないんだよ。
(犯罪ですよ)
ゴンザレス……
聞かなかった事にしてよぉ。
(犯罪ですよ)
うぅ……
分かったよぉ。
(はい。犯罪はいけませんからね。ありのままのぺるみ様を歴史に刻みましょう)
……本気で言っているの?
(はい。ど変態だっていいんですよ? それがぺるみ様なんですから)
……おもしろがっているよね?
(……ぷっ。いえ。ど変態でなければぺるみ様ではありませんからね)
……今、吹き出さなかった?
(……気のせいですよ。きっと素敵な石像が建ちますよ)
石像?
石碑じゃなくて?
(ヨダレを垂らしながらベリアルを撫で回すぺるみ様の石像が……)
……ハデスに話そうか?
(……ごめんなさい)
分かればいいんだよ。
最近ゴンザレスはわたしに対して雑じゃない?
(……ごめんなさい)
……でも、嬉しいよ。
やっと家族になれた感じがする。
(……え?)
気を遣って言いたい事を言えないとか、そんなのよくないと思うから。
今のゴンザレスは冗談を言ったりできてすごくいいと思うよ。
(……家族。オレ……すごく嬉しいです)
これからも、ずっとずっと仲良くしてね?
(えへへ。はい。末永くよろしくお願いします)
……で、ノートの事だけど……
(泥棒はダメですよ?)
うぅ……
はい。
やっぱりダメか……
誰にもばれないようにこっそりやるしかないね。
(ふふ。ペルセポネったら)
バニラちゃん!?
聞いていたの!?
(自称ゴンザレスには聞かれていないわよ?)
……誰にも聞かれないように考えていたのに。
ん?
自称?
(ふふ。わたしを甘く見ていたようね)
え?
じゃあ、もしかして……
(ペルセポネが心を隠していた時も全て聞こえていたわ? ウラノスやガイアには聞こえていなかったようだけど……)
そっか……
(わたしを信じてくれてありがとう)
バニラちゃん……
(わたしが……怖くない?)
え?
(ペルセポネを……この世界ごと消し去ろうとしたのに)
……バニラちゃんは?
(え?)
バニラちゃんは……
この世界と一緒に消えようとしていたの?
それとも……
(全てを消し去ったあとに異世界に行こうとは思わなかったわ)
……そっか。
(ふふ。ペルセポネ?)
うん?
(ありがとう)
バニラちゃん?
(誰かに信じてもらえるって嬉しいわね)
……!
うん!
(……それと、泥棒はダメよ?)
……でも、聖女のイメージが……変態って……
(泥棒はダメよ?)
……はい。
うぅ……
このままじゃ、後世に『聖女は変態だった』って伝わっちゃうよ!
今からでも変態をやめればなんとかなるかな?
でも……
わたしの変態はとめられないし……
どうしたらいいの?




