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ヒヨコ様の交換ノート(1)

 というわけで今日も遅刻ギリギリにアカデミーに着いたけど……


「えへへ。ヒヨコ様は今日もかわいいなぁ」

「バニラ様もゴンザレス様も最高です」

「昨日は会えなくて寂しかったですよぉ」


 クラスの皆は一日会えなかっただけでこんなに寂しがるなんて。

 二か月後にアカデミーを辞めて、いなくなったら脱け殻みたいになっちゃうんじゃないかな?

 あれ?

 でも女の子達は前髪をいじったりしてソワソワしているね。


「おい……ジャック……鼻水と涙とヨダレをつけないでくれ……」


 前の席のジャックが泣きながらベリアルに頬擦りしているね。

 ベリアルが心から嫌がっているよ。

 わたしの時は『ぺるみのバーカ。ど変態で気持ち悪いんだよ』とか言うのにジャックには言えないんだね。

 

「ヒヨコ様ぁぁぁ! 大好きですぅぅ」


 ……ジャックもすっかり、ど変態だね。


「……鼻水とヨダレは、やめてくれ……うぅ……オレは綺麗好きなんだよぉ……」


 ベリアル……

 あと二か月この変態の巣窟に通わなければいけないんだね。

 今じゃ皆、立派な変態だからね……



「あ、そういえば聞きましたか? このクラスに新しく三人入ってくるみたいですよ?」


「え? 三人も?」


 確か、学費の補助が出るようになったから今までアカデミーに通えなかった貴族が来られるようになったんだよね。

 普通科は貴族と王族しか入れないから、生活が苦しい貴族が来るのかな?

 このクラスはバカクラスって呼ばれているから……

 勉強が苦手な貴族が来るのかな?

 

「さっき学長にヒヨコ様の交換ノートを渡しに行った時にチラっと見たんですけど三人ともすごくかっこ良かったんです。それを話したらクラスの女の子達が興奮しちゃって……あ、でもリリーさんは大丈夫ですよ? オレに夢中ですからっ! えへへ」


 オレに夢中ですから……?

 ふふ。

 幸せなんだね。

 ん?

 今、ベリアルの交換ノートって言った!?


「ちょっと待って!? わたしが気になるのは……ヒヨコちゃんの交換ノートって何!?」


「え? そっちですか? あ、そうか。ペリドット様には素敵な婚約者様がいますからね。ノートを二冊用意して毎日学長と、ヒヨコ様について書き合っているんです。って……ええ!? ヒヨコ様の寝癖が二つになってツインテールみたいになっている!?」


 ジャックは今気づいたんだね。


「ふふふ。そうなんだよ。ヒヨコちゃんはバニラちゃんと一緒に寝るようになったら抱き枕とバニラちゃんにあたっているところに寝癖がつくようになったんだよ!」


「……! 何て事だ! 早速交換ノートに書かないと! えっと……今日はヒヨコ様の寝癖が二つに……っと。超絶かわいくて……えっと……世界を滅ぼしかねないかわいさで……うーん。文字にするのは難しいなぁ」


 ジャックがいつの間にかわたしと同じくらいの、ど変態になっているよ……

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