前に向かって(3)
「ペルセポネ……突然で驚いたが……これで全てが解決したのだな」
ハデスが優しく微笑みながら、わたしに抱っこされているベリアルをつかんで放り投げたね。
って……
ええ!?
今、ベリアルを放り投げたよね!?
……!
おお、さすが飛べるヒヨコちゃんだよ。
投げられながら飛んで吉田のおじいちゃんに抱っこされたね。
「お前っ! ハデス! 今、オレを放り投げただろ!? うわあぁん! じいちゃん! ハデスがいじめたよぉ!」
さっそくおじいちゃんにチクっているね。
「ははは。そうか、そうか。ハデスちゃんはぺるぺるに近寄る男が嫌いだからなぁ」
吉田のおじいちゃんがいつも通りに笑っているね。
でも、バニラちゃんとは気まずそうにしているよ。
吉田のおじいちゃんもバニラちゃんもベリアルが大好きだし、ベリアルも二人が大好きだから、もしかしたらベリアルが二人の架け橋になってくれるかもしれないね。
「オイ、ハデス。オレハ、ゼッタイニ、ペルセポネカラ、ハナレナイゾ」
おお……
うさちゃんが、わたしにしがみついているね。
ハデスに投げられると思っているんだね。
「……子うさぎは……ずっとペルセポネの側にいればいい」
あれ?
ハデスがこんな事を言うなんて……
「ハデス……オマエ、ワルイモノデモ、タベタノカ?」
うさちゃん……
それって、悪口じゃないかな?
「……子うさぎがいればペルセポネに悪い虫がつかないからな」
「……ソウイウコトカ」
ん?
悪い虫?
虫がいるの?
「近寄る害虫どもを子うさぎが処分しろ」
「ショブン……ハデスガ、ヤレバ、イイダロ。オレハ、ネテ、イタインダ」
「ベリアルのようにブクブク太りたくなければ起きて動いた方がいい」
「……タシカニ。アアハ、ナリタク、ナイガ……」
おお……
二人してベリアルの悪口を言い始めたね。
「うわあぁん! 二人がオレの悪口を言うよぉ!」
ベリアルにもしっかり聞こえていたんだね。
「ははは! そうか。これで全部解決か! ……じゃあ……安心して第三地区から出て行けるな」
え?
雪あん姉?
「そうですね。今日中には幸せの島の家を空け渡したかったので……」
ウェアウルフのお兄ちゃん……
今日、二人で開墾した島に移り住むんだね。
……悲しいなんて考えたらダメだよね。
それに、朝早くから第三地区に来て、夕方までいてくれるし。
近くにある島だし……
「ぺるみ様……悲しいお顔をしないでください。わたしまで悲しくなります」
「お兄ちゃん……ごめん。えへへ。これからは二人で仲良く過ごせるんだよね。おめでとう」
「……ぺるみ様。今までと何も変わりませんよ? ぺるみ様が第三地区に行けば、お雪さんが畑を耕していて。わたしは第三地区や幸せの島の家具や建物を直している。今までと何も変わりません」
「……うん。そうだよね。えへへ。ダメだね。お別れじゃないって分かっているのに……寂しくなっちゃって」
「不思議ですね。初めは幸せの島でオークとハーピーとハデス様の三人で暮らしていて……赤ん坊だったぺるみ様が流れ着いて……四人家族が……ああ、ドラゴン王を忘れたら叱られますね。五人家族から、マンドラゴラ達やベリアルやわたしが増えて。魔王が戻ってきて……第三地区の皆さんや、天族の皆さん、バニラちゃん。人魚とゲイザー族、お花さんと熊太郎が来て。あっという間に大家族になりました」
お兄ちゃんが懐かしそうに話しているね。




