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オケアノスから語られた真実(1)

今回はオケアノス(バニラちゃん)が主役です。

 オレがこの世界で初めて目を覚ました時……

 オレの周りにはオレと同じく初めて目を覚ました『魔族』と『人間』がいた。

 だが、赤ん坊はオレ一人で人間と魔族が喜んで世話をしてくれた。

 そうだ。

 あの頃は、人間も魔族も仲良く暮らしていたんだ。

 もちろん、魔族は人間を食べたが必要以上に殺しはしなかった。

 

 不思議な関係だったな。

 なぜ人間は食べられると分かっていながら魔族と仲良くしていたのか……

 それは今のオレでも分からない。

 

 あの頃の世界には言葉が無かった。

 だが、少しずつ言葉や文字ができていった。

 火を使うようになり、家ができ、服も着るようになっていくと……

 愛しい女性が……現れた。

 相手は人間だった。

 あの頃は子孫繁栄の実がなくても異種族同士で子を授かる事ができた。

 

 オレはその女性との間に子を授かった。

 美しい人間の容姿。

 銀の髪に青い瞳の娘。

 不思議な事に人間の妻には似ていなかった。

 髪の色も瞳の色も……

 一体誰に似たのか……

 だが、オレは娘がかわいくて堪らなかった。

 

 あの頃は自分を化け物だとは思いもしなかった。

 化け物などという言葉さえ無かったのだから……


 だが……

 人間が知恵をつけ始めると、魔族と人間は距離を置くようになった。

 その頃には妻と娘は年老いて亡くなっていた。

 オレをよく思わない人間から逃げるように、子孫と山奥に小さな家を建てるとその地で穏やかに暮らし始めた。

 

 そして、あの事件が起きた。


 人間が松明を持ち笑いながらオレを殺しに来たんだ。


 まだ幼い子孫がオレを庇い怪我をした。

 オレは制御できない闇の力で襲ってきた人間を殺すと家族と共に誰も知り合いのいない地に移り住んだ。


 だが……

 オレはもう家族と共に暮らせないと思うようになった。

 家族は人間だ。

 魔族のオレがいたらまた同じ事の繰り返しだ……


 オレは家族に別れを告げるとひとりで小さな島で暮らし始めた。

 

 今までは家族の賑やかな声の中で暮らしていたから……

 この寂しさに押し潰されそうだった。

 家族は今頃どうしているだろう……

 家族といる時はあっという間に一日が過ぎたのに……

 この一人きりの静かな島では、一日が永遠に感じられる。

 ……まだ日が暮れないのか。

 オレは……ずっとこんな日々を過ごすのか?


 そんな時に聞こえてきたんだ。

 誰の声だ?

 

 優しい女性の声……


『オケアノス……必ず助け出すから……待っていて……』


 ……?

 オケアノス?

 誰かの名か?

 心が温かくなる声だ……


『あの醜い化け物が……わたしの子? あの時のあの子なのか?』


 今度は男性の声?

 化け物?

 それは……オレの事か?


 オレはその時、他人の心の声を聞く力がある事に気づいた。


 そして……

 あいつがこの島に来たんだ。

 今では『幸せの島』と呼ばれるこの島に……


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