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やり直すなんて簡単にはできないよ(5)

「……! あぁ……そうね。そうだわ……あの子なんて呼び方はダメね」


 おばあちゃんが悲しそうに話しているね。


「呼んであげて欲しいな。気持ちのこもった名前を……想いのこもった名前を……」


「まずはそこから始めてみるわ。……ありがとう。ペルセポネ……わたくしは……やり直したいの。手離さなければいけなかった全ての子達と……思い通りにならなかったら命を奪うしかないなんて……そんな考えはいけないわね」


「おばあちゃんとおじいちゃんなら絶対にできるよ!」


「ペルセポネ……?」


「わたし……雪あんねぇに『ぺるみならできる』って言われると何でもできちゃう気がするの。大好きな人に応援されると勇気が出るんだよ」


「本当に立派になったわね。ペルセポネ……わたくしはペルセポネが大好きよ? だから……勇気が出てきたわ。かわいい月海るみ……ルゥ……ペルセポネ……愛しているわ……わたくしの宝……」


 おばあちゃんが涙を流しながら抱きしめてくれる。

 身体が小さく震えて冷たくなっているね。

 ……でも、群馬のあの時とは違う。

 鼓動が聞こえる……

 生きているんだ。

 あの冷たい雪の中で息をしなくなった時のおばあちゃんとは違うんだ。

 ドキドキが心地いい。

 天族の姿だから心臓があるんだね。

 創り物の身体の時は何の音も聞こえなかったよ……


「おばあちゃん……?」


「なに? どうかしたの?」


「大好き」


 天族の姿のおばあちゃんは背が高いから、胸の音が耳元に聞こえて気持ちが落ち着くよ。


「ふふ。ペルセポネは甘えん坊さんね」


「うん。甘えん坊なの。吉田のおじいちゃんも……」


「……ん? じいちゃんか?」


 おじいちゃんは泣いていたんだね。

 瞳を潤ませながら尋ねてきたよ。


「おじいちゃんも抱きしめて?」


 ちょっと恥ずかしいけど……

 やっぱりわたしは抱きしめられるのが好きだから。


「……ぺるぺるは本当に……甘えん坊だなぁ」


 おじいちゃんが涙を拭うと、抱きしめてくれる。

 三人で抱きしめ合うとすごく穏やかな気持ちになる。

 

「えへへ。幸せだよ」


 バニラちゃんにも……

 この幸せを味わって欲しいな。

 そんなのわたしの身勝手な考えだっていう事は分かっているの。

 捨てられて傷つけられた事を考えればそんな簡単な事じゃないよね。

 でも……バニラちゃん自身も迷っているはずだから。

 復讐をやめる最後のチャンスなんだよ。

 おじいちゃんとおばあちゃんが命をかけてバニラちゃんを愛している事を分かって欲しいよ。

 こんなに愛している事を分かって欲しいよ。

 

 全ての復讐を終えた後にバニラちゃんは絶対に後悔するから。

 バニラちゃんが言ってくれたんだよ?

『わたしはあなたで、あなたはわたし』だって……

 だからわたしには分かるんだよ。

 バニラちゃんは本当はすごく優しいって。

 お願いだから……

 復讐をやめて皆で幸せになる道を進もうよ。

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