お父様との内緒話~前編~
わたしの心が落ち着くとお母様とハデスはそれぞれ用事があるからと執務室から出て行った。
お母様はおいしいお菓子を持ちに自分の宮殿に戻って、ハデスはウリエルの私室に行ったみたい。
第三地区でおばあちゃんが作ってくれたおやつをバスケットに入れて持ってきたけど、ウリエルへのお土産なのかな?
吉田のおじいちゃんはいつの間にか第三地区に戻っていたみたい。
長く留守にはできないからね。
「あれ? ペルセポネ!? 翼! 翼が無いよ!?」
お父様と二人でお茶をしていると、突然騒ぎ始める。
今、気づいたんだね。
第三地区にいる時にハデスに隠してもらってからすごく楽なんだ。
ずっと人間の身体で過ごしていたから、飛べもしない翼があっても邪魔なんだよね。
「あぁ……ハデスが隠してくれたの。わたしにはやり方が分からないから今日はハデスにやってもらったんだよ? 今度教えてもらうの」
「……えっと、ハデスがそう言ったの?」
「……? そうだよ? お父様? どうかしたの?」
「ペルセポネ……翼を隠すなんて普通はできないんだよ? 姿を変える事はできるけどね。だから、ハデスは特別なんだよ?」
「でも……ポセイドンも翼が無かったよ?」
「それも、ハデスにやってもらったんだよ。海で泳ぐのに邪魔だからってね。だから、ペルセポネは練習してもできないんだよ?」
「そうなの? うーん。ハデスはわたしにもできるみたいに言っていたけどなぁ。ウリエルの私室から帰ってきたら訊いてみようかな?」
「ハデスは自分ができる事は他の人もできるって思っているからね。はぁ……最近、ウリエルは私室に籠りっぱなしで一歩も出てこないんだよ。全然仕事もしないし食事もどうしているんだか……」
「……そうなんだね。月海のフィギュアを作っているんだろうね。さっきハデスが、おばあちゃんの作ったおやつを持って行ったみたいだよ?」
「なるほど。ハデスが食べ物を運んでいたんだね。ハデスはいいなぁ。お父様は邪魔するからって今朝も私室に入れてもらえなくてさ。どこまでできたか見たいのに。ハデスだけ入れるなんて、ずるいよ」
「……どうしてハデスは入れるの? 食べ物を運んでいるから?」
「いや……それが……内緒だよ? ルゥの幼女時代の映像石を持っているらしくてさ。それを使ってルゥの人形も作らせているみたいなんだよ」
「映像石? 何かな? 初めて聞いたよ」
「動画を撮れる石みたいな物だよ。ハデスにお願いしても、もらえなくて。天界にも無いんだよ。群馬で使っていたビデオカメラを持ち込もうとしたら大天使にダメだって言われてさ。残念っ!」
「ハデスはどこでそんな物を手に入れたのかな?」
「ここだけの話だよ? 魔族の世界でかなり危ない事をしていたみたいなんだよ。その中で偶然作り出されたみたいだよ?」