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やり直すなんて簡単にはできないよ(3)

「おばあちゃんはお花ちゃんの話をいつから知っていたの?」


 かなり前から知っている感じがしたけど……


「……あの隠し部屋はわたくし以外には心を聞かれないようになっているの。わたくしはお花ちゃん達が困った時に助けられないといけないから聞こえないと不便だったし。お花ちゃん達が息子のその言葉を聞いた時に……わたくしは分かってしまった。そんな事を言うのはあの子だけだから。あの子の心がどれだけ苦しんでいるのかを初めて知ったわ。あの子はずっと心を隠していたから……あの子の心はいつも穏やかで……だから……あの子の真実の心を知って……辛かったわ。いえ、辛いなんてわたくしが言ったらいけないわ……」


「おばあちゃん……」


 すごく辛そうだよ。


「ウラノスがあの子の心を二つに分けて善と悪にした時……正直ほっとしたの。あの子には二つの心があったのだと……全てが悪い心ではなかったのだと」


「……」


 あまりに辛そうで、何て声をかけたらいいのか分からないよ……


「わたくしは……悪い心が恐ろしかった。わたくしが……救えなかったの……母親なのに……だから、あの子の心は憎悪に満ちてしまったの。全てわたくしのせいなのよ」


「それは違う……全てわたしが悪かったのだ。あの子を捨てたのはわたしだ……ずっと側にいたつもりだった。人間に襲われて力を暴走させ、もう子孫と暮らせなくなってから、わたしはずっとあの子といた。だが……あの子はあの時にはもう……我らへの復讐を考えていたのかもしれない」


 おじいちゃんが辛そうに話している。

 自分を責めているんだね。


「ウラノス……もうあの子を止められないのかしら……」


 おばあちゃんもなんとか声を絞り出しているね。


「……無理矢理……あの子を止める事は簡単だ。今のあの子には古代の闇の力はないからな。だが……あの子の……生きる意味だった『我らへの復讐』を……取り上げてもいいのだろうか?」


「それではペルセポネまで巻き込まれてしまうわ!? 絶対にダメよ! 罪があるのはわたくし達だけなのよ? 誰も巻き込みたくないの……」


 おばあちゃんはわたしを巻き込みたくないんだね。


「あの子と……三人で話し合おう。親子で……どれだけ時間がかかってもかまわない。ガイア……本当にすまなかった。全ては子が醜い容姿だからと捨てたわたしの罪だ。付き合ってくれるか? 我らの子が心から笑えるようになるように……共に幸せに暮らせるように……」


「……あの子はわたくしの産んだ子よ? もちろんよ」


 ……おじいちゃんとおばあちゃんはバニラちゃんと過ごす時間を何よりも優先すると決めたんだね。

 ……?

 二人が見つめ合って黙っているね。

 心の中で会話をしているみたいだ。

 おばあちゃんは心の声が聞ける事をおじいちゃんに話したみたいだね。

 ……わたしには聞かれたくない話なのかな。


「ぺるぺる……すまねぇなぁ。じいちゃんとお月ちゃんはしばらく留守にするからなぁ」


「ベリアルの事は任せたぞ? ばあちゃんの母ちゃん達が一緒に住んでるから第三地区で今まで通り過ごせるだろう」


 いつも通りのおじいちゃんとおばあちゃんの話し方に戻ったね。


「バニラちゃんとどこかに行くの?」


「三人で世界をのんびり旅してくる……バニラちゃんから『本当は自分が息子だった』と言ってもらえるように……今度こそ本当の親子になりてぇんだ」


 おばあちゃん……

 わたしはおばあちゃんに月海るみとして育てられたんだよ?

 だからわたしには分かるんだよ……

 これは……嘘だ。

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