やり直すなんて簡単にはできないよ(2)
「ペルセポネ……」
おばあちゃんが辛そうにわたしの名を呟いたね。
「バニラちゃんは本当はすごく優しいんだよ。すごくすごく……優しいんだよ。ずっとわたしの魂だったから……わたしには分かる。……違うね。わたしだけは信じたいの。バニラちゃんは子孫達に花冠を作ってあげたんだって。聖女の墓前に花冠を供えたいとも言っていたの。その言葉に嘘は無いはずだよ?」
「バニラちゃんがペルセポネに見せた過去は嘘ばかりだったかもしれないわ? バニラちゃんは自分がベリアルに創られた母親のような存在だと言ったの。でも、実際はベリアルが創り出された存在だったはずよ? バニラちゃんこそがわたくしの息子だったの……」
「おばあちゃんと吉田のおじいちゃんの一番が……バニラちゃんだって分かってもらえないかな?」
「え?」
「今のおじいちゃんとおばあちゃんの頭の中はバニラちゃんでいっぱいのはずだよ? でも、それは愛しているとかじゃなくて悪さをするんじゃないかの心配で頭がいっぱいなんだよね?」
「……それは……確かに……そうだけれど……」
「そうじゃなくて……上手く言えないけど……愛情だけで接したら……バニラちゃんにもその気持ちが伝わるんじゃないかな? もちろん、そんなに簡単に解決できる事じゃないのは分かっているよ? でも、バニラちゃんは他人の心に敏感だから……色々感じているんじゃないかな?」
「ペルセポネ……」
「もしかしたら……ベリアルを二人の息子だって思わせて……二人がベリアルをかわいがる姿を客観的に見たかったんじゃないかな?」
「……え?」
「自分が息子としてかわいがられるのが……怖かったんじゃないかな?」
「ベリアルに、遥か昔の自分の罪を被せる為に嘘をついたのではないと言いたいの?」
「今まで……ただ復讐をする為だけに生きてきて……それだけが心の支えで……だから……もうここまで来てやめられないって……だから、今優しくされたらその心がぶれそうで心配なんじゃないのかな? 怖くて堪らないんじゃないかな……」
「……ありがとう。本来なら親であるわたくしがバニラちゃんを信じなければいけないのに……あの子が……周りに迷惑をかけるのではないかと身構えてしまって……本当にダメな母親ね」
「親だからだよ?」
「……え?」
「わたしは親じゃないから客観的に見られるの。おばあちゃんは母親だから……色々考えちゃうよね」
「ペルセポネ……」
「それが親なんじゃないかな?」
「それが……親?」
「大切すぎて必死になっちゃうの。お父様もそうだったでしょう? わたしを愛してくれているから集落であんな事をしたの。周りが見えないくらいわたしを愛しているんだよ」
「……本当にそうね。ペルセポネ……ありがとう。おかげで冷静になれたわ」
「……おばあちゃん。偉そうに話してごめん」
「そんな事はないわ? ありがとう。バニラちゃんを警戒するのではなくただ愛するわ……」
おばあちゃんの表情が少しだけ穏やかになったね。




