やり直すなんて簡単にはできないよ(1)
「……話して? ペルセポネの心が聞こえてこないのよ」
おばあちゃんが尋ねてくる。
「……バニラちゃんに心を聞かれないようにしているからかな? ……あのね? バニラちゃんはわたしが攻撃された力を吸収する事を知っていて……それで……お父さんにわたしを攻撃させて古代の闇の力を吸収させた後に……」
ダメだ。
言葉に詰まっちゃうよ。
「……ペルセポネ……大丈夫? 辛かったら話さなくていいのよ?」
おばあちゃんに気を遣わせちゃったよ。
ただでさえ辛い時なのに……
「おばあちゃん……話すよ? 話さないと伝わらないから……」
吉田のおじいちゃんがずっとそう教え続けてくれたんだ。
怖くても話さないといけないんだよ。
「ペルセポネ……強くなったわね」
おばあちゃんが優しく微笑んでいる。
「わたしが闇の力を手に入れたら……バニラちゃんは今の毛玉の姿でわたしから力を無限に引き出して……そうしたら……わたしは……魔法石みたいに爆発して……おばあちゃんと吉田のおじいちゃんにその姿を見せた後に……この世界と天界を消滅させるんじゃないかって……」
こんな話を聞かせてごめんなさい。
「……わたくしも同じ事を考えたわ。そして、バニラちゃんは異世界に逃げる……とね」
「……え? あ……わたしは……バニラちゃんがこの世界と一緒に消滅するんじゃないかって思っていたの」
「……ペルセポネは優しいのね。とにかくバニラちゃんには気をつけるのよ? ペルセポネをよくない方へ誘導するかもしれないわ。わたくしとウラノスは親として償うのは当然として、ペルセポネには何の罪も無いのだから」
「バニラちゃんは……気に入らないのかもしれないね」
「え?」
「自分は捨てられたのに……わたしもお花ちゃんも熊太郎も大切にされているから……」
「……そうかもしれないわね。その上、バニラちゃんが創り出したベリアルまでわたくし達と仲良くしているから……心は限界まできているはずよ」
「でも……もしバニラちゃんが異世界に行ったとしても、もうわたしの力は使えないんだよね? その時には、もうわたしは死んでいるから……わたしはたぶん魂を入れたり抜いたりする力があるんだよね。ペルセポネの身体で魂を抜き入れされたから……でも、わたしが死ねばその力は使えない。バニラちゃんは毛玉の姿でずっと異世界に居続けるのかな? そんな悲しい事……考えたくないよ」
「悲しい事……?」
「だって……知り合いも一人もいないし……この世界ごと皆を滅ぼした事を後悔しながら生き続けないといけないんだよ? そんなの苦しいよ。辛くて耐えられないよ」
「……ペルセポネ。バニラちゃんはペルセポネが考えるより狡猾で邪悪な存在よ? ペルセポネは優しすぎて心配になるわ? お願いだからバニラちゃんに惑わされないで? バニラちゃんはすでにペルセポネに何度も嘘をついているわ? お願いよ。何かあったらすぐにわたくしに話して? 今はペルセポネの心が聞こえてこないから心配なのよ」
「うん……おばあちゃん……辛いよね。わたしの事も守りたいし、バニラちゃんの事も守りたいんだよね?」
「……ごめんなさい。ペルセポネ……」
「わたしは分かっているから。ずっと群馬でおばあちゃんに育ててもらったから。おばあちゃんがどんなにわたしを愛してくれているかを知っているから……でも、バニラちゃんは違うよ? バニラちゃんはおばあちゃんと吉田のおじいちゃんを憎んでいるの。ずっと魔族の友として側にいてくれたおじいちゃんの事でさえ憎んでいる……心が疲れ果ててもうどうしたらいいか分からなくなっちゃったんだよ」
そんなの辛すぎるよ……
バニラちゃんはすごく優しいんだから。
あの優しさは嘘なんかじゃないよ。
 




