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偽りの心とシロツメクサ

 二代前の聖女が亡くなってから数千年の時を経てついに埋葬される日がやって来た。

 今はお父様の時を戻す力で腐敗していない頃の姿に戻されたから、まるで眠っているみたいに見えるね。

 ルゥにそっくりだよ。


「そろそろ棺の蓋を閉めるか……」


 おじいちゃんが悲しそうに話しているね。


「そうね……この子が亡くなってからの数千年……色々な事があったわ」


 毛玉の姿のバニラちゃんが優しく聖女の髪に触れているね。

 反対の手には小さい花を持っている。

 シロツメクサかな?


「かわいい花だね」


「ふふ。わたしの好きな花なの。雑草だって言われる事もあるけど……」


「わたしも好きだよ? 群馬で花冠を作る時によく使ったよ。懐かしいな。この世界と群馬は似たような物がいっぱいあるんだよね」


「わたしは……花冠にせずに一輪だけ摘むのが好きだったわ。でも……子供や孫達にせがまれてよく花冠を作ったわね。懐かしいわ。もう、数千年が経ったのね」


「優しいおじいちゃんだったんだね」


「ふふ。あの子達はわたしの宝だったわ」


「そっか。ベリアルをかわいがる姿を見ればそうだった事がよく分かるよ」


「そうね。ベリアルは赤ん坊みたいにかわいいわね」


「バニラちゃんはその花を摘みに出かけていたの?」


「そうよ。またペルセポネの力を借りてしまったわ。空間移動をしたの」


「わたしは大丈夫だよ? でも……今度は一緒に行ってみたいな」


「え?」


「その花が咲いている場所に……」


「ふふ。そうね。一面にこの花が咲いていてそれは綺麗なのよ? 今度一緒に行きましょうね」


「うん。ありがとう」


「わたしは今は毛玉の姿だから花冠を作れないの。その時がきたらペルセポネが代わりに作ってくれないかしら? 聖女の墓前に供えたいの」


「もちろんだよ。バニラちゃんは素敵だね」


「……え?」


「わたしはバニラちゃんでバニラちゃんはわたし……か。すごく嬉しいよ。今は別々になったけど……これからもよろしくね」


「ふふ。わたしこそよろしく。改まって言われるとなんだか恥ずかしいわね」


「えへへ。口に出して言いたかったの」


「ふふ。ペルセポネらしい考えね」


 やっぱりバニラちゃんは穏やかで優しいよ。

 わたしの考えは間違っていたんだよね?

 疑ったりして申し訳なかったよ。



 こうして、皆で二代前の聖女の埋葬を終えた。

 聖女に最期だけでも穏やかに過ごせてもらえたんじゃないかな。

 そう思いながら、お母様の植えてくれた永遠に咲き続ける桜を見つめていた。


 でも……

 まさか、お花ちゃんと熊太郎からあんな話を聞く事になるなんて……


 その日の夜、二人から衝撃的な過去を知らされてわたしは身体の震えが止まらなくなった……

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