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疲れた心と寄り添う心(4)

「ペルセポネ……ゆっくり時間をかけて……心の悲しみや辛さと向き合っていこう。全てを受け入れ、前を向くにはあまりにも辛い事が多過ぎた……ドラゴン王はイナンナの記憶はないからな。第三地区のイナンナの子孫のおばあさん達と話してみてはどうだ? 記憶を受け継いでいるからな」


 ハデスが毛玉の姿のまま話し始める。


「おばあちゃん達と……?」


「そうだ。たくさん話して、お互いの気持ちを理解し合えればペルセポネの心も軽くなるかもしれない。それに、以前話していた事を覚えているか? ブラックドラゴンは元々天界が嫌いだった。だからイナンナと浮遊島を創ったらしい。今は『イナンナの力だった方』のドラゴン王と共に、グンマで穏やかに暮らせて幸せそうだ」


 確かにそう言ってはいたけど、生まれ育った天界から追放されて、もう二度と帰れなくなっちゃったんだよ?

 辛いはずだよ。


「ブラックドラゴンはドラゴン王をイナンナとしてではなく一人の女性として大切に想い幸せに暮らしているし、集落で神を待ち続けていた集落の少女も前ウェアウルフ王と楽しく過ごしている。他の子孫のおばあさん達も第三地区で幸せそうに笑っているし、ルミのおばあさんもヨシダのおじいさんと幸せそうだ。ペルセポネのあの過去がなければ今の皆の幸せは無かったのだ」 


「今の皆の幸せが無かった?」


「そうだ。何か一つでも欠けていれば全てが噛み合わず今の幸せは無かったのだ。だから、ペルセポネが心を痛める事はないのだ。これからも皆で笑って過ごそう。ペルセポネが笑うと皆も笑顔になるのだぞ?」


「皆も……?」


「そうだ。だから……わたしにもペルセポネの心の苦しみを分けて欲しい。毎日、たくさん話そう。たくさん笑おう。わたしの愛しい人……」


 ハデスが毛玉の姿から天族の姿に戻って抱きしめてくれる。


「今は心が苦しくて堪らないだろう。だが……わたしやデメテル、第三地区の人達はいつでもペルセポネの側にいるからな。辛い時は声にして辛いと言って欲しい。わたしは鈍感だからな。なかなか気づけない。だから、辛い時はわたしに言って欲しいのだ。辛いから抱きしめて欲しいと……」


「ハデス……」


「できそうか?」


「わたし……辛いよ……抱きしめて……?」


「……よくできた。偉いぞ?」


 ハデスが優しく抱きしめながら髪を撫でてくれる。


 温かくて気持ちいい。

 心に不安を溜め込み過ぎて耐えられなくなっていた事は分かっていたの。

 でも、わたしのせいで不幸にしてしまったたくさんの人達に申し訳なくて、誰かに話す事ができなかった。

 わたしだけ楽になるなんてできなかった。

 ハデスは、以前にもいっぱい話そうって言ってくれたのに……

 一人で抱え込んで爆発しちゃったんだ。

 それで倒れちゃったのか。

 巻き込んでしまったルゥやじいじの為にも笑顔で過ごそうと思っていたのに結局皆に悲しい顔をさせちゃった。

 わたしの心は不安定だ。

 ちゃんとしたいのにすぐに折れちゃうんだ。

 変わらないと……

 変わりたい。

 自分の為にも、心配してくれる皆の為にも。


「ごめんね。わたし、ちゃんと話すよ。もう溜め込まない……」


「あぁ、一緒にゆっくり前に進もう」


 一緒にゆっくり?

 そうだね。

 ゆっくりゆっくり……

 心を前に向けていこう。

 ハデスが一緒にいてくれるから、心がすごく温かいよ。

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