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絶対に赦されない事~後編~

「大丈夫ですよ。二度とそんな恐ろしい暮らしをする事はありません。これからはこの島で穏やかに、ただ幸せに過ごしていくのですから」


 ウェアウルフ王の息子さんの言う通りだよ。


「ただ幸せに……? わたしはずっと狭く暗い場所で生きてきました。タルタロスの牢……そのあとは洞窟の隠し部屋……隠し部屋での生活は虐待をされる事がなく肉体的にはかなり楽になりました。ですがいつかまたタルタロスに連れ戻されるのではないかと不安で、心は常に疲れていました」


 熊太郎が辛そうに話しているね。


「そうでしたか……」


「悪い大天使は……本当に皆、消滅したのでしょうか。もう誰も我々を化け物とは呼ばないのでしょうか」


「……何があったのかはよく分かりませんが、確かに悪い大天使は先代の神が消滅させました。もう、安心して大丈夫ですよ? それと……あなたは化け物などではありません。とても優しく穏やかで……毛並みも美しいです」


「え? 毛並み……? 先程、温泉というものに入ったからでしょうか」


「温泉ですか。いいですね。わたしも今度入りに来ようか……もしよければその時に一緒に温泉に入りませんか?」


「え? わたしと……ですか?」


「はい。よかったら友になっていただけませんか?」


「……友に? わたしと?」


「はい。美しい毛並みの秘訣を教えてください」


「……っ」


 熊太郎が泣いている?

 どうしたのかな?

 ウェアウルフ王の息子さんも慌てているよ。


「どうしましたか? どこか痛いですか? それともわたしが嫌な事を……」


「違います……タルタロスの牢で……苦痛に耐えながら、わたしは生きるとは痛みを伴うものだと……わたしは生きているというだけで罪を犯しているのだから、いたぶられるのは当然だと……ですが……洞窟の隠し部屋に行ってからは……妻と怯えながら過ごして……また連れ戻されたらと思うと恐ろしくて……」


「どれほど酷い目に遭わされたのですか……心が痛くなります」


「勇気を出して洞窟から出て良かった……これが本当の生きるという事なのですね。こんなにも心が温かい……」


「これからは幸せな事しかありませんよ? それに、例え悪者に連れ戻されそうになったとしても絶対にわたしが助けます。絶対に連れて行かせたりはしません。だから……安心してください」


「連れて……行かせない……?」


「はい。今は……声を出して泣いてください。大声で泣いたら、すっきりしますから。そうしたらきっと前を向けますよ?」


「……はい。ありがとうございます……」


 熊太郎とウェアウルフ王の息子さんは素敵な友達になりそうだね。

 お花ちゃんも泣きながら見つめているよ。

 あ、お花ちゃんの手を雪あん姉が握っているね。

 二人も友達になったのかな?

 

 ……タルタロスで酷い実験をしていた天族は本当に皆消滅したのかな?

 まだどこかに生き残りがいるかもしれないよ。

 吉田のおじいちゃんがタルタロスから実験に関する記録を持ってきてくれたんだよね?

 実験に関わった天族を調べる必要がありそうだね。

 安心してお花ちゃんと熊太郎が暮らす為に……

 もう二度とそんな酷い事はさせないよ。


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