この島の常識は世間では非常識なんだよね
「ペルセポネ……思ったよりも落ち着いているようで良かった」
ハデスが微笑みながら話してくれているね。
「お兄ちゃんがいつか雪あん姉と作った島に行くのは分かっていたから。でも……泣いちゃったよ」
いつか、この日が来ても泣かないって決めていたのに。
「それでいい……それに猫の時は泣いたのに自分の時は泣かなければ嫌われていたのかと心配になるだろう?」
「え? 猫って……グリフォンのお兄ちゃん? ……あはは。そうだね……元気が出たよ。ありがとう、ハデス」
「……ペルセポネは強くなったな」
「皆が支えてくれたからだよ?」
「そうか……では、どこかから小さな島を引っ張ってこさせるか」
「え? 引っ張ってこさせる? 誰に? わたしが土の力で創ろうかと思っていたんだけど……」
「そいつが暇そうにしているからな」
「そいつ?」
ハデスがそんな風に言うのはお父様だよね?
でも、そいつって?
ここにはいないけど。
「ポセイドンだ。全く……ペルセポネの身体に入り込むなと言っているだろう」
「え? またわたしの身体に入っていたの!?」
いつの間に!?
いつもどうやってわたしの中に入っているの!?
「ははは! ヘスティアちゃん達には秘密だぞ?」
ポセイドンは相変わらずだね。
わたしの身体から笑いながら出てきたよ。
お花ちゃんと熊太郎が絶句しているね。
「さっさと近くにある小さい島を引っ張れ。相変わらず暇そうだな」
ハデスは、お父様とポセイドンに対する言動が雑だよね。
「ははは! 任せろ。おもしろそうだからな。うーん。確かあの辺りに小さい島があったはずだ」
ポセイドンが右腕を前に伸ばすと海が振動する。
さすがは海の王だね。
「おお! 見ろ! 島が動いてきたぞ!」
雪あん姉が叫ぶ。
初めて島が動くのを見たお花ちゃんと熊太郎が怯えているね。
「よし、適度に第三地区から離して……と。あとは、向こうの島と第三地区の間の海水を固めれば……これでどうだ。いつでもこっちに来られるぞ」
今までのわたしとお花ちゃん達との会話を全部聞いていたみたいだね。
勝手に身体に入り込むのは本当にやめて欲しいよ。
「あの……これは……?」
お花ちゃんが震えながら尋ねてきたね。
「ああ、ごめんね。今日からあそこに見える島がお花ちゃんと熊太郎と卵ちゃんの島だよ?」
「ええ!? あの……今、あの島が移動してきたように見えたのですが……」
「あ、うん。ポセイドンはハデスの弟なんだよ? 海の神様なの。あの島に行ってみよう? 海水が固まっている上を歩けば大丈夫だから」
「ええ!? 海水が固まっている!? すごい! 洞窟の外は不思議な事ばかりです!」
すっかり口癖になっちゃったね。
この第三地区の常識は他の場所にいる人から見れば非常識だから……
これを当たり前だと思われたら困るよ。
でもこれからは第三地区の人とか天族の家族と関わりながら暮らすんだから慣れてもらわないといけないのかな?
慣れるまでは毎日驚きの連続だろうね。




