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お散歩をしながら(3)

「ペルセポネ様……ペルセポネ様は……ガイア様に育てられたのですよね?」


 お花ちゃんが尋ねてくる。


「え? うん。群馬では孫として育ててもらったよ?」


「実は……勇気が無く洞窟からなかなか出られないわたし達にガイア様が……」


「ん? おばあちゃんが?」


「はい。『全てペルセポネに任せてみて? あの子は不思議な子なの。どんなに辛い時でも、あの子に触れると穏やかな春の日のような温かい心になるの。きっと二人も卵も幸せになれるから』と……」


「おばあちゃんがそんな事を?」


「ガイア様は長い時間を……心から傷ついて……あの時……わたし達をタルタロスから連れ出した時も、コットス様達を救えなかったと涙を流しておられて」


「そうだったんだね」


「ですが……今は幸せそうに見えました。わたしが言うのはおかしいかもしれませんが……本当にありがとうございました」


「え?」


「ペルセポネ様のおかげでガイア様の笑顔を見る事ができました」


「そんな……わたしは何もしていないのに」


「ペルセポネ様……わたしと彼……熊太郎に名をつけていただけて嬉しかったです。今までは……化け物としか呼ばれた事がなかったので。だから、本当に嬉しいです」


「わたしは名前のつけ方が変だってよく言われるんだけど……嫌じゃなかった?」

 

「嫌だなんて! 絶対にあり得ません」


「良かった。あ、これこれ! 桃がいっぱい出てくる巨大桃だよ」


 話していたらいつの間にか畑に着いていたんだね。


「これが……」


「へそのボタンを押すと食べた事がないくらいおいしい桃が出てくるの」


「では……押してみます。……うわ……グニュっとしました……」


「そうなんだよ……気持ち悪いグニュだよね」


「……はい」


『オエッ!』


 今日も安定のえずき具合だね。


「出てきたね。ちょっと気持ち悪いだろうけど食べてみて?」


「……あぁ……はい。……!? おいしい……」


 お花ちゃんと熊太郎がかなり驚いているね。

 わたしも食べたくなってきたよ。

 いっぱいボタンを押しちゃおう。


「そうなんだよ。すごくおいしくてどんどんボタンを押しちゃうの」

 

『オエッ! オエッ! オエッ! オエッ! モモッ! オエッ!』


 この声さえ出さなければ気持ちよく食べられるのに……


「……? 時々違う事を話すのですか?」


「そうなんだよ。時々、桃って叫ぶの」


「……ぷっ。あははは!」


 お花ちゃんが楽しそうに笑っているね。

 熊太郎も控えめに笑っているよ。


「第三地区の皆にもお土産に持って行こうか。皆も桃が大好きだから」


「はい。ペルセポネ様……これが……幸せなのですね」


「え?」


 お花ちゃんが潤んだ瞳で話しているね。

 笑いすぎたからじゃなくて……

 昔の辛かった記憶を思い出しているのかな?


「まさか、声を出して笑う日が来るなんて……勇気を出してこちらに来て良かったです」


「頑張りすぎると疲れちゃうからゆっくり二人のペースで暮らしていこうね?」


「はい。そうしてみます」


 穏やかに笑っているお花ちゃんと熊太郎の姿に心が熱くなる。

 これからは誰にも虐げられずに幸せを感じながら暮らしていけるよね?

 卵から赤ちゃんが孵ったら今よりももっと嬉しそうに笑う二人を見られるんだろうな……

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