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お散歩をしながら(2)

「洞窟の外は不思議な事ばかりね……」


 お花ちゃんが熊太郎に話しかけているね。


「そうだな。ペルセポネ様はなぜ一人で笑っているんだろう」


 ん?

 熊太郎とお花ちゃんで話す時は敬語じゃないんだね。


「ねぇねぇ。わたしにも今みたいに話して欲しいよ」


「え? ですが……」


 お花ちゃんが慌てているね。


「これからは一緒に暮らすんだから素の方が楽だよ? 突然、大勢の知らない人と暮らすのは嫌じゃない?」


「え? それは……」


「あのさ、やっぱり気を遣うんじゃないかなって思うんだよね。だから二人を散歩に誘ったの」


「え? そうだったのですか」


「人魚達も近くの島にいて毎日遊びに来てくれるんだよ? だから、いきなり知らない人と一緒に暮らすのが大変そうなら近くに小さい島を創って暮らしたらどうかな?」


「小さい島を創って……ですか?」


「うん。あ、でも食事だけは一緒にできたら嬉しいな。第三地区の皆は一緒に食事をするとすごく楽しいんだよ?」


「なぜそんなに気遣ってくださるのですか?」


「あ……うん。ふたりが、この島に来たばかりの時に辛そうだったから。こんな話をしてごめんね。タルタロスで辛い事がありすぎて大勢の中にいるのが苦しいんじゃないかと思ったの」


「ペルセポネ様……」


「わたしもね……心が辛くなりやすいっていうか。さっきは話さなかったけど……少し前に耐えられなくて自殺をした事もあったの」 


「ペルセポネ様が……?」 


「わたしは何度も誰かの身体に憑依して……その身体に申し訳なくて。身体が変わるたびに、周りの皆がわたしの中に違う誰かを見ているんじゃないかって辛くなって……しかもわたしのせいで第三地区の皆を巻き込んでいて……」


「……それで心が辛くなってしまったのですね」


「うん……だからかな? 無理をしている人を見るとすぐに分かるの」


「……そうでしたか」


「どうしたいかな? お花ちゃんと熊太郎で決めて欲しいよ」


「……ガイア様はどう思うでしょうか? せっかく第三地区に連れて来てくださったのに……」


「おばあちゃんは気にしないよ? むしろ二人が自分で何かを決めた事を喜んでくれると思うよ?」


「……ガイア様が?」


「あ、ふふ。少し遠いけど見えるかな? 人魚達が遊びに来たよ?」


「え? 人魚さんが? 初めて見ました。筋肉がすごいのですね」


「広場の方に行ったね。ご飯を食べに来たのかな? 魔法石でマッサージをしに来たのかな?」


「……普段は別に暮らしていて食事や遊びに来るのですね」


「ちょうどいい距離っていうのかな? 人魚は魔族だから人間を食べるんだよ。まぁ、普通に食事もするけどね。でも、第三地区の皆は今でこそ創り物の身体だけど元は人間だから、ずっと一緒いるとお互い辛いと思うんだよ」


「確かに……そうですね」


「無理をせずに、会いたい時に遊びに来て、困った時に相談に来て、お腹が空いたら食事に来る。そのくらいの距離感がいいんじゃないかな? 長い時間を無理をしながら過ごすのは辛いでしょう?」


「はい。ありがとうございます。正直戸惑っていたのです。ですが……子の為には洞窟から出た方がいいとも思いましたし……」


「広場に戻ったら皆に話してみよう? ここにいる皆は、お花ちゃんと熊太郎を心から応援しているんだよ」


「ありがとうございます。はい。話してみます」


「うん。無理して疲れちゃったら心が辛くなっちゃうから。二人のペースで暮らして欲しいよ」


 新しい場所での生活は不安な事ばかりだろうから。

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