疲れた心と寄り添う心(3)
「そんな……あれは全部ペルセポネのせいじゃないのに! 全部わたしが……父親として何をやってもダメで……そのせいなんだよ?」
「それは違うわ? わたしが怒りをコントロールできなくてハデスとの事を反対したからよ」
「いや、悪いのはわたしだ。ペルセポネを勝手に冥界に連れ去ったせいだ」
お父様もお母様もハデスも自分のせいだと思っているの?
違うよ。
全部わたしが悪いのに……
「あの時は皆がどうかしちまっていたんだなぁ……今だったらあんな事にはならなかっただろ?」
吉田のおじいちゃんは、遥か昔からずっと知っていたのかな?
全部知っていたの?
いつから?
どうして群馬にいたんだろう?
「ヨシダさんの言う通りだわ……いつも誰かのせいにして、自分を中心に物事を考えて。もっときちんと話して……分かってもらえるまで、分かり合えるまで話し合っていれば、この苦しい数千年は無かったはずよ?」
「そうだな。あの時は全てが悪い方に向かっていた。ファルズフのせいだけではない。……ペルセポネが疲れているのは身体だけではない。心も疲れ果てている。あまりに辛い事ばかりあったからな」
ハデスもわたしの心が弱っている事を分かっていたんだね。
「そうね。ペルセポネは全部自分のせいだと思っているから……優しい子だから、見ていてかわいそうで……」
お母様……
そんな風に思ってくれていたんだね。
「ペルセポネのせいじゃないのに! 全部わたしが悪いんだよ! 群馬の集落を利用したのも、月海を……苦しめたのも……ごめんね……ごめんね。全部お父様が悪いんだよぉ! ……あ、ペルセポネ、起きていたんだね……」
お父様に目を開けているのを気づかれちゃった。
「……」
ダメだ。
やっぱり声が出ない。
「掛け物が重過ぎて声が出ないのよ! もう! だからやり過ぎだって言ったのよ。早くどかして! 掛け物は一枚でいいのよ!」
「だってぇ……寒かったらかわいそうだと思ってぇ……」
お母様……
この掛け布団はお父様がやったんだね。
「大丈夫か? 苦しいか? ゼウス、早く掛け物をどかすのだ!」
毛玉の姿のハデスが慌てている。
「今どかしているよぉ。ペルセポネェごめんね……ごめんね。全部お父様のせいなんだよぉ……」
あぁ……
お父様、泣かないで?
吉田のおじいちゃん……
話したいの。
お願い。
声を出せるようにして?
「……違うよ。全部わたしのせいなの。わたしがいなければ誰も傷つかずに済んだの……」
普通に話せるね。
やっぱりおじいちゃんが話せなくしていたんだ。
「そんな風に考えていたなんて……違うわ? ペルセポネがいてくれるから……だからお母様は生きているのが楽しいのよ?」
「そうだよ。ペルセポネはお父様の宝物さんなんだよ? だからペルセポネがいない生活なんて考えられないよ」
お母様とお父様が悲しそうな顔をしている。
ずっと心配をかけていたから親孝行したかったのに……