ガイアが語る過去(1)
今回は月海の祖母でありペルセポネの曾祖母であるガイアが主役です。
あれは今から数千年前……
まだわたくしとウラノスが天界で暮らしていた頃。
わたくし達の間に産まれたのは五十の頭に百の腕を持つ三人の男の子だった。
「なんて恐ろしい化け物を……これは、わたしの子ではない……絶対に違う……」
ウラノスは身体を震わせそう呟くと、泣いてすがるわたくしの手を振り払い子供達を冥界の奥深くにあるタルタロスに幽閉したの。
わたくしは、なんとか子供達を救いだそうと必死にウラノスに頼んだけれどその願いは叶わなかった。
それから何人もの美しい容姿の子を授かったけれど、わたくしがタルタロスの子達を忘れた事は一度もなかった。
いつか必ず助け出す。
その時を待ち続けた。
けれど……
また、産まれてしまったの。
天族の姿ではない容姿の子が……
そして……ウラノスはこの『人間と魔族の世界』を創り、その子を捨てた。
その時、この世界に人間と魔族が創り出された。
成長した子が魔族として……この世界の人間を餌として虐げる姿を見る為だけに……
そうする事でウラノスは自分が子を捨てた事を正当化しようとしたの。
ウラノスの思惑とは裏腹に、その子は人間との間に子を授かり幸せに暮らしていた。
この世界には人間と魔族以外にも精霊が創り出されていた。
その子が暴走したら命を奪う役割の上位精霊……
けれど上位精霊達は、その子を愛していた。
赤ん坊の頃から見守っていたその子を愛さずにはいられなかった。
優しくて穏やかで温かな笑顔のその子を……
上位精霊達は人間と魔族が争わないように見守り、力も貸していた。
けれど……
知恵をつけた人間達が、魔族に襲われない為にと優しいその子を見せしめに……殺そうとしたの。
そして……身代わりに怪我をした子孫の姿を見たその子の闇の力が暴発して、その場にいた悪意ある人間は死んだ。
ウラノスが、魔族の姿でその子と暮らすようになったのはこの頃だったかしら……
わたくしが、ハデスちゃん達の父親にウラノスの局部を切り落とさせ、それに動揺したウラノスはこの『人間と魔族の世界』に逃げ込んで来た。
その時に、傷つき苦しむその子の姿を見てウラノスは更に傷ついた。
存在さえ忘れかけていた子。
自分が捨てた子がこれほど辛い生き方をしていたとは……と。
ウラノスも子を捨てたばかりの頃は様子を見る事もあったけれど、しばらくするとほぼ忘れているようだった。
わたくしは赦せなかった。
わたくしが産んだ愛しい子達を、容姿が他と違うからと捨てたウラノスを……
『タルタロスの子達』と『この世界に捨てられたその子』を取り戻す為にと、わたくしはハデスちゃん達の父親に、ウラノスの局部を切り落とし神の座から退かせて欲しいと頼んだの。
けれど……
ハデスちゃん達の父親は、神になっても『タルタロスの子達』と『この世界に捨てられたその子』を助けてはくれなかった。
そして、ハデスちゃん達の父親は……ハデスちゃん達を飲み込んだ。
しばらくして、ゼウスがハデスちゃん達を腹から救い出した。
それから長い戦いが始まったの。
天界と冥界を巻き込んだあの戦が……




