ガイアとウラノス(1)
今回は月海の祖母であり、ペルセポネの曾祖母であるガイアが主役です。
「……イア……ガイア……どこだ……」
洞窟の外からウラノスの声が聞こえてくる。
ウラノスがわたくしを助けに来るなんて……
嫌われている……まではいかなくても、会いたくないと思われている事は分かっていたの。
だから、ウラノスの大切なところを切り落としてからは、ガイアとしては会っていなかった。
これからも『お月ちゃん』としてウラノスの側にいようと思っていたけれど……
わたくしは臆病ね。
群馬で月海には、しっかりしろと言い続けてきたのに、自分は逃げてきたの……
ペルセポネになった月海は勇気を出して前に進んだ。
今度はわたくしの番よ。
「……ガイア様……大丈夫ですか?」
洞窟にいる大きな熊のような生き物がわたくしを案じてくれる。
「ええ。大丈夫よ。ありがとう」
「顔色が悪いです。寒いですか?」
もう一人の大きな魚人族のような生き物がわたくしにショールをかけようと手を伸ばす。
「ガイア!」
ウラノス……
来たのね。
「ガイアに何をする!?」
……?
ウラノス?
何か誤解をしたのかしら……
「待って! 違うわ。この子は……」
「ガイアから手を離せ!」
……ウラノス。
お月ちゃんではないわたくしを案じてくれるの?
「ウラノス……誤解よ。この子達は……」
「ガイア! 目を閉じていろ! 今助けるからな!」
「ウラノス! 違うの! 待って!? この子達は冥界で子を産ませる実験をされた子達なの!」
「……? ガイア……?」
「わたくしがこの洞窟に逃がしたのよ……」
「……どういう事だ?」
「……わたくしは……わたくしは……どうしてもタルタロスの子供達を救いだしたかったの。それで……あの天界の戦の混乱に紛れてタルタロスに潜り込んだの。でも子供達は参戦する為に天界に出発していて……天界に戻ろうとした時にこの子達に出会ったの」
「ガイア……」
「話を聞けば……無理矢理卵を産ませられて……このまま卵から子が孵ればどんな目に遭わせられるかと……わたくしはタルタロスからこの子達を逃がしたの。この『人間と魔族の世界』の洞窟に……ね」
「そうだったのか……ガイアはそれからずっとこの洞窟にいたのか?」
「……それは……違うわ……」
「天界にもいなくて……案じていたのだ……」
「ウラノス……あぁ……ごめんなさい……」
捜してくれていたのね。
「謝らなければいけないのはわたしの方だ……すまなかった……」
「ウラノス……」
「わたしが愚かだった……ガイアの大切な……わたし達の大切な子を……わたしは……捨てて……本当にすまない……」
「……ウラノス……それは……」
「わたしは……この世界に捨てた子の側で……ずっと後悔し続けていた」
「後悔……」
「謝っても赦される事ではない……だが……本当に……本当に……すまなかった……わたしは……母であるガイアに甘えていたのだ……何をしても赦される……と」
「ウラノス……」
「すまない……一人の女性として……大切にする事ができなかった……」
「……そうね。ウラノスは『子を捨てないで』と泣いてすがるわたくしの手を払った……」
「……! そうだ……わたしは……酷い事を……すまない」
「でも……ウラノスはこの世界であの子を守り続けた。そして……あの子亡き後もこの世界を守り続けた。愚かな大天使達から……魔族の姿でずっとずっと長い時を過ごしながら……」
あなたは立派になった……




