吉田のおじいちゃんとペルセポネ(3)
「天界と冥界は別物だからなぁ。天界には空間移動で入れるけど、冥界に入るには神でさえ申請書が必要なんだ。それは遥か昔のハデスちゃんが決めたんだ。自分勝手で愚かな天族に冥界を荒らされねぇようになぁ。それに冥界の王はハデスちゃんだからなぁ。天族にとやかく言われやしねぇさ」
おじいちゃんの言う通りだね。
「遥か昔の冥界はかなり酷い場所だったらしいね」
「そうだなぁ。暗くて寒くて……常に誰かの悲鳴が聞こえていた。じいちゃんは……そんな場所にコットス達を……本当にじいちゃんはバカだなぁ……」
「……おじいちゃん」
訊いてみようかな?
今ならわたしの心を簡単におじいちゃんに聞かれないはずだよ。
「ん? どうした?」
「コットス達の……母親は? えっと……どうしているの?」
コットスの母親は『おばあちゃん』だけど……
知らない振りをしないとね。
「……そうだなぁ。しばらく会ってねぇなぁ」
「……会いに行かないの?」
「……じいちゃんは嫌われてるからなぁ」
「嫌われている?」
「大事な子供達を捨てたんだ……嫌われて当然だなぁ。子を捨てないでと泣いてすがるガイアを……じいちゃんは……」
おばあちゃんも同じ事を言っていたね。
「会いに……行ってみたら? ガイアは……おじいちゃんの母親なんだよね?」
「……ぺるぺる。……そうだなぁ……いつかは行かねぇとと思いながらズルズル今になっちまった」
「おじいちゃん……」
「じいちゃんは意気地無しだなぁ。ぺるぺるには『頑張れ頑張れ』って言いながら自分は逃げてるなんて……ダメだなぁ」
「わたし……思うんだ。ベリアルも前を向いてくれて……わたしも安心したの。今はわたしの中からバニラちゃんが出て行って、バニラちゃんもかわいいベリアルの側に母親としていられる事になったでしょう?」
「そうだなぁ。バニラも幸せそうにベリアルをかわいがってたなぁ」
「わたしが……『ペルセポネ』が『月海』になって『ルゥ』になってまた『ペルセポネ』になって……全てがあるべき場所に戻ったの。ハデスも冥王に復帰したし……だから……おじいちゃんも……ガイアと話して欲しいよ。それが辛い事なのは分かるけど……」
「じいちゃんも前に進む時が来たって事か……」
「おじいちゃんは前に進んだよ? 勇気を出してコットス達に会いに行ったでしょ?」
「……ぺるぺる。そうだなぁ。でもガイアは赦しちゃくれねぇだろうなぁ。じいちゃんは本当に最低な奴だからなぁ」
「ガイアはおじいちゃんの母親なんだよね?」
「そうだなぁ……じいちゃんは……母親のガイアに甘えてたんだろうなぁ。何をしても赦してくれるってなぁ。それで酷く傷つけちまったんだ」
「お母様が言っていたよ? 娘のわたしの事が吸いつきたいくらいかわいいって……ガイアもおじいちゃんをかわいくて仕方ないんじゃないかな?」
教えてあげたいよ。
ガイアがおじいちゃんをどれだけ愛しているのかを……
でも、わたしがそれを言うのは間違っているよね。
歯がゆいよ……




