神様代理ついに始まる(1)
「うぅ……」
ついに天界で神様代理をする時間になっちゃったよ。
お父様とお母様達は大喜びで群馬の温泉に行っちゃったね。
わたしは不安でしかないよ。
仕事はお父様が全部終わりにしてくれてあるから特にする事は無いらしいけど……
何か問題が起きたらわたしが解決しないといけないんだよね。
「ペルセポネ……大丈夫だ。天界は平和になったから問題など起こらない」
ハデスはそう言うけど……
「やっぱり不安だよ……あ、特別なお酒はおいしい?」
神様と配偶者だけが飲める特別なお酒。
ふふ。
神様を引き受けたのはハデスにこのお酒を飲んで欲しいからっていうのもあったんだよね。
「ああ。飲んだ事の無い味だな。ブドウの深い味がする」
「そっか。わたしにはまだお酒は早いみたいだから飲めないけど……ふふ。ハデスに喜んで貰えて良かったよ」
「ペルセポネ……まさか、わたしにこの酒を飲ませる為に神の代理に?」
「あ、もちろんお父様達に群馬に行って欲しいのもあったけど、ハデスにお酒を飲んで欲しいなって思ったの。なかなか飲めない物だからね。……聞いたよ? 天界と海と冥界の王様を決めるくじ引きの事」
「……そうか」
「お父様もポセイドンも酷いよ! ハデスに冥界を押しつけたんでしょ? その頃の冥界は辛い場所だったんだよね?」
「そうだな」
「ハデスが頑張ったから冥界はあんなに穏やかで優しい場所になったんだね」
「わたしの『理想』が冥界なのだ」
「素敵だね」
「素敵……か。ペルセポネ……」
「うん?」
「遥か昔、冥界で行われた実験の記録が見つかったのだ」
「え? 確か……闇に近い力を持つ両親から産まれた子供の?」
「ああ。ヨシダさんがあの後探し出してくれたのだ。……だが、実験は失敗したようだな」
「失敗?」
「と言うよりは、実験をしようとした時に遥か昔の天界での戦が始まったのだ」
「……そう。じゃあ、無理矢理妊娠させられずに済んだんだね。良かった」
「……ペルセポネ。それは……傷つくかもしれないが……知っておいて欲しい」
「え?」
「実験は行われた。一度だけな。そして……子が……卵が産まれたのだ」
「……その子は今どうしているの?」
「記録は卵が産まれたところで終わっていた。戦が激しくなってきて実験どころではなくなってしまったのだろう」
「じゃあ卵から赤ちゃんが無事に産まれたか誰にも分からないの?」
「ああ。コットス達もその頃は天界に来て戦に参加していたからな」
「じゃあ……その卵の親は?」
「分からない。コットス達が門番としてタルタロスに戻った時にはもう親はいなかったらしい。その時、コットス達は卵が産まれた事を知らなかったようだからな。卵がどうなったかは誰にも分からないのだ」
誰にも分からない?
そんな……




