商売上手の店主には気をつけて
「……ペルセポネ。そうか? では、帰って天界に行くか。そろそろゼウス達がグンマに行く時間だからな」
ハデスがわたしにプレゼントできなくて残念そうにしているね。
そうだ。
この温泉旅行の為にお父様は仕事を頑張ったんだよね。
帰りは明日の朝……
わたしが神様代理なんて大丈夫かな?
緊張してきたよ。
「ぺるみ……このチョコレートうまいぞ。モグモグ」
……え?
待って?
この声は……
「ヒヨコちゃん!? なんて事を……」
チョコレートを食べちゃっているよ!?
箱を抱えて食べているけど……
いち……に……さん……五粒!?
五粒も食べちゃっているよ!?
一粒金貨二枚……
嘘……金貨十枚!?
ひ……百万円!?
百万円っ!?
「モグモグ。うまいな。おかわりっ!」
「はい。では、おかわりを……」
ベリス王がベリアルにチョコレートを渡したんだね。
ショーケースに入っているからベリアルには取り出せないはずだし。
第三地区に帰ればタダなのに!
「ちょっとヒヨコちゃん! そのチョコレートは一粒金貨二枚なんだよ!? お金を払えるの!?」
「モグモグ……え? 金貨……二枚……? 嘘だろ!? 第三地区じゃタダだろ!?」
「もうっ! お金はあといくら残っているの!?」
「うぅ……銅貨三枚くらい……」
「全然足りないよ? わたしは……うーん銅貨十枚……」
「……どうしよう。オレ……食い逃げで捕まるのか? 嫌だよぉ……」
そんな……
牢屋に囚われるヒヨコちゃん……?
あ、ちょっとかわいいかも……
「仕方ないな。わたしが支払おう。いくら分食べたのだ?」
ハデスが呆れながらベリアルに確認しているね。
「うぅ……この箱が十個入りだから、全部で八個……」
八個!?
金貨十六枚だから……
百六十万円!?
「そうか。では、面倒だから金塊で払おう。釣りはいらない」
……また金塊で!?
しかもお釣りはいらないって?
「いいな……」
……!?
普段は声を出さないゴンザレスが羨ましそうに呟いた!?
「ゴンザレスにはペルセポネが世話になっているからな。他のゲイザー族の分と……チョコレートを五箱もらおう」
「はいっ! ありがとうございますっ!」
ベリス王が嬉しそうに笑っているよ!?
いいカモになっているんじゃない!?
「ちょっと!? ハデス!? 帰ればタダなんだよ!?」
「この形のチョコレートはヴォジャノーイ族は作っていないからな。ベリアルだけ食べてゴンザレスが食べられないのは、かわいそうだしな」
「それは……そうだけど……」
「うわあぁ! ハデス様! ありがとうございますっ! やったあ!」
うぅ……
ゴンザレスは、すごく嬉しそうだね。
でも……
「ふふ。ハデスは子供に甘いパパになりそうだね」
「……え? 子に……? あ、そうか……もう心配は、いらないのか」
ハデスの言う通りだね。
バニラちゃんがわたしの魂と分かれたからもう赤ちゃんが爆発する危険がなくなったんだ。
「そうだね。ふふ。わたしとハデスにも早く赤ちゃんが来てくれるといいね」
「……ペルセポネ。そうだな」
全てが良い方向に進んでいるね。
ハデスも嬉しそうだし。
あと心配なのはこの世界の補正力だけど……
補正力は、目に見えないから何も分からないんだよね。