ベリス王のお店は庶民のわたしには不釣り合いだね
「うわあぁ! すごい!」
これがベリス王のお店か。
中は貴族でいっぱいだ。
チョコレートの甘い匂いが店中に広がっているよ。
キラキラの宝石に綺麗で品の良いドレス。
レースでできた日傘に、ボンネットには大きなリボンがついているね。
壁紙もシャンデリアも上品でベリス王のセンスの良さが一目で分かるよ。
……生演奏をしているのは人化している魔族だね。
ここまでこだわっているのにお店を辞めるって言っていたけど。
うん。
あれは嘘だね。
絶対に辞めるはずないよ。
また騙された……
(ははは。ベリス王は商売が好きですからね。辞めるはずがありませんよ。今も次に何の商売を始めようかで頭の中がいっぱいですからね)
ゴンザレス……
やっぱりそうだったんだね。
(うわあぁ! 綺麗なチョコレートだなぁ……)
ふふ。
貴族用に綺麗な形にしているんだね……って!?
チョコレート一粒金貨二枚!?
ええ!?
あっちにあるボンネットは金貨十枚!?
あのドレスは金貨三十枚!?
値段設定がすごすぎるよ。
金貨一枚は日本の十万円くらいだよね?
あのチョコレートは一粒二十万円!?
だからクラスメイト達が驚いていたんだね。
ん?
ちゃっかり桃まで売っているね。
桃製造マシンから出てきた桃だよね?
ひとつ金貨三枚……
元はタダなのに……
「ハ……ハデス。わたし……毎日チョコレートをもらって食べているけど……一度もお金を払っていなかったよ」
「魔族には金自体無いからな。気にする事はない。カカオはウェアウルフ族がペルセポネの為に育てているしチョコレートはヴォジャノーイ族が喜んで加工しているからな」
「うぅ……チョコレート一粒金貨二枚だなんて……しかも、わたしが今着ているドレスの色違いが金貨三十枚だよ? 汚したらどうしよう……」
三百万円を着ているんだよ!?
三百万円……
怖くなってきたよ。
「気にする事はない。あの色違いのドレスも似合いそうだな……ボンネットと日傘と色を合わせて購入するか……」
「ハデス!? 大丈夫! いらないから! 緊張して身体が震えちゃうから!」
「……そうか? では、チョコレートを……」
「大丈夫! 第三地区に帰ればタダだからっ!」
こんな、ぼったくりチョコレートなんて買えないよ!
もったいない!
「せっかく来たから何か贈らせて欲しいのだが……」
「いらないよ! 高すぎるよ! 緊張して眠れなくなっちゃうから!」
「眠れなくなるのは困るな……」
「そうだよ! 気持ちだけで大丈夫だから!」
危ないよ。
ハデスは金銭感覚が普通じゃないから下手したらお店ごと買い取るとか言い出しそうだよ。
「気持ちだけ……か。つまらないな。何か形に残したいのだが……」
「ハデスと町を歩けたから、それだけでわたしは幸せだから。ね? だから大丈夫! もう帰ろう?」
余計な買い物をする前に帰ろう。
これ以上いたら危険だよ。




