二代前の聖女を取り戻せ! (8)
「あの時って?」
ハデスは何か分かったのかな?
「あの場所はアルストロメリア王国の近くの森なのだ」
「うん。そうだよね。あんなに近いのによく代々のアルストロメリア王は、こっそり聖女に会いに行かなかったよね」
(あ、それでしたら……過去のアルストロメリア王達はしょっちゅう会いに行っていたようですよ?)
え?
ゴンザレス?
そうなの?
(はい。他の王も他国に知られぬようにこっそり会いに行っていましたね)
……約束の意味ってなんだろうね?
四大国の王様が集まらないと行ったらダメな約束だったんだよね?
(ははは。まぁ、約束なんてそんなものですよ。あ、オレは約束を守りますけどね)
……信じているよ。
ゴンザレス……
(聖女様が腐敗している事を知った四大国の王達は、それを次の代の王に知られない為に『絶対に棺を開けるな』と後世に伝えたようです)
それって……
四大国の王様との約束を破って、こっそり聖女の棺を開けたのがバレないように?
(そうでしょうね)
……困った王様達だよ。
だから聖女の肉体は腐敗したんじゃないのかな?
(……欲の塊ですよね)
「……ペルセポネ? ぼーっとして大丈夫か? 疲れたか?」
しまった……
ゴンザレスと心の中で話していたから、ぼーっとしているように見えたんだ。
ハデスに心配させちゃったよ。
「あ、うん。大丈夫」
「そうか……覚えているか? ルゥだった時にアルストロメリアで浄化しただろう」
「え? あ、うん。吉田のおじいちゃんがケルベロスにまたがって大変だった時だよね?」
「あの時の浄化の力が何かしら関わっているのかもしれない。ペルセポネ以外に腐敗を治す力がある天族がいるとは思えないからな。まだルゥの身体ではあったが……」
「そう……なのかな?」
「ゼウスが時を戻したとも考えられないからな。ヨシダさんにも分からないのなら、そう思っても良いのではないか?」
そうなのかな?
……?
あれ?
時が止まっている?
「おばあちゃん……」
「ペルセポネ……お疲れ様。聖女を助けてくれてありがとう」
「うん。見守ってくれてありがとう。聖女はどうして腐敗していなかったの?」
「あぁ……あれは……ゼウスなのよ」
「ええ!? お父様が!?」
「困ったものね……ゼウス自身すっかり忘れているようだし」
「……忘れている?」
「洞窟に聖女が腐敗したまま放置されていると聞いた時に『ペルセポネが悲しそうだから』と勝手に聖女の時を戻したのよ」
「そうだったんだね」
「ゼウスが動くのは家族の為だけでしょう? しかも、すぐに忘れてしまうのよ」
「……悪意が無いから怒れないし……困ったね」
「ゼウス自身も忘れているからペルセポネがした事にしておけばいいわ? 真実を知っているのはわたくし達だけだし」
「……うん。お父様がやったってお母様達にバレたら怒られちゃいそうだし。そうするよ。火干しは、かわいそうだからね」
「火干し……そうね。あれを受けても普通に生きているなんて……ゼウスはすごいわね。では時を動かすわ。ペルセポネ……夜は天界に行くのね。揉め事に巻き込まれないように気をつけて?」
「え? 揉め事? それって……?」
「ふふ。ペルセポネならきっと解決できるわ?」
「え? 何? 不安になってきたよ……」
一体どんな揉め事に巻き込まれちゃうのかな?
あ、時が動き始めたね。
うぅ……
やっぱり神様の代理なんて無理だよ。
でも、お父様達は群馬の温泉を楽しみにしているし……
はぁ……
無事に代理が終わればいいけど。
「ぺるぺる……聖女を埋葬するのは明日でもいいか?」
吉田のおじいちゃんが聖女の髪を撫でながら話しかけてきたね。
「うん……」
「一晩かけてお別れをしてぇんだ。バニラもそうするか?」
「そうね。最後くらいは賑やかに過ごさせたいわ」
「そうだなぁ」
吉田のおじいちゃんとバニラちゃんは良い関係みたいだね。
安心したよ。
「さて、それでは……ぺるみ様とハデス様は、お着替えを。約束通りアルストロメリアのわたしの店舗で客寄せをしていただきますよ?」
ベリス王はやる気に満ち溢れているね。
熱量がすごいよ。
商売人の瞳だね。
「うぅ……分かったよ。ところで、ベリアルにもかわいい服を用意してあるんだよね?」
「もちろんです。新型ボンネットと愛らしいドレスを用意してあります」
「ぐふふ。堪らないね。想像しただけで興奮してきたよ」
「ハーピーの息子にも貴族の子供用の服を用意しました。ふふふ。貴族の親子の服が売れに売れるでしょうねぇ」
「……ベリス王、顔が怖いよ」
「一体いくら儲かるのか……考えただけでゾクゾクしますよ」
ゾクゾク?
ワクワクじゃなくて?
そういえば、前から思っていたけどベリス王はそんなに稼いで何にお金を使うのかな?
うーん?