二代前の聖女を取り戻せ! (6)
「はいっ! 王様のママ。いい匂いのお花だよ?」
……?
お墓に話しかけているの?
よく見ると墓前に野花がいくつか……
この子が持ってきたのかな?
「えへへ。あのね? 昨日、王様が平民の治療費がタダの日を作ってくれたの。ママがすごく喜んでいたから、はいっ! 王様は毎日忙しくてお花を渡せないから王様のママにあげるね?」
……今の話って?
「えっと……綺麗なお花だね」
いきなり話しかけて驚かせちゃうかな?
「ん? うん! あのね? 毎日来てるの」
「毎日?」
「うん! 王様は忙しいからね。王様のママのお墓に来られないんだって。だからリリが毎日来てるの。あと、毎日王様に『ありがとう』ってしてるの」
「毎日ありがとう?」
「うん! 王様は毎日リリ達の幸せを考えてくれているんだって。ママが言ってたよ?」
「そっか。素敵な王様なんだね」
「うん! だからリリもママも毎日幸せに暮らせるんだよ? あ、ママだ!」
女の子が走って行ったね。
「……ふふ。早速答え合わせができたね」
「……! 答え……合わせ……」
マグノリア王の瞳から涙が溢れているね。
「マグノリア王は素敵な王様だっていう答え合わせだよ?」
「……まだ、脱け殻になるのは早いかもしれませんな」
「ふふ。マグノリア王が脱け殻になるなんてあり得ないよ」
「……まだまだ若き王達には負けられませんな!」
「あはは! そうだね」
こうして、マグノリア王を執務室に送ると洞窟に戻る。
……棺のまま聖女を連れて行った方がいいよね?
でも……
本当に腐敗しているのかな?
お母様もベリス王も言っていたから間違いはないよね?
(開けてみますか?)
ゴンザレス……
……うん。
わたしだけは聖女の最期を見届けないといけないと思っていたの。
ルゥがこの世界最後の聖女だから。
二代前の聖女に『ありがとう』って伝えたかったの。
(ベリアル達には……傷つくから水晶で見るなと言ったんですね)
吉田のおじいちゃんにもバニラちゃんにも、これ以上傷ついて欲しくなかったの。
だから、わたしが聖女の最期を見送ろうと思って……
(……開けてあげましょう。そして……お別れをしましょう)
うん。
ゴンザレス……ありがとう。
付いてきてもらえて心強いよ。
よし、棺を開けるよ。
ドキドキするよ。
二代前の聖女に会えるなんて……
第三地区から新しいワンピースを持ってきていたんだよね。
着替えさせてから第三地区に連れて行こう。
腐敗していても女の子だからね。
最後くらいは綺麗に……
「え?」
棺を開けると……
どういう事?
ルゥにそっくりな女の子が眠っている?
いや、亡くなっているの?
そんな……
お母様もベリス王もかなり前に腐敗していたって……
頬に触れると……
「冷たい……」
やっぱり亡くなっているんだよね?
身体は綺麗だけど服はボロボロだ。
本当に聖女なの?
どうして腐敗していないのかな?




