つむじとそれぞれの思惑~前編~
「おい。ぺるみ……お前はどうしてそうなんだ?」
ヒヨコちゃんのベリアルが怒っているみたいだね。
無理矢理抱っこして吸って撫でているからかな?
スーハースーハー……
今は、ハデスはお父さんと一緒に魔王城に行っているからね。
吸い放題だよ!
「だって仕方ないんだよ? これは病気みたいな……そうだよ! 呪いだからね? 仕方ないの! スーハー」
「……お前、本当に呪いなんだろうな? ただの変態なんじゃないか?」
「ちが……違うよ! 呪いのせいだよ! 一時間に一度モフモフを触らないといけない呪いなの! スーハー」
「ふぅん……じゃあ、もう満足しただろ? 離せ!」
「ええ!? 待って! もう少し……もうひと吸いだけ! スーハー」
「もうひと吸い!? やっぱり、お前は……ただの変態だぁぁ!」
うぅ……
また怒らせちゃった。
ベリアルはかわいいから、ついついやり過ぎちゃうんだよね。
「ほら、ベリアルもぺるみもこっちに来い。果物を切ったからなぁ」
おばあちゃんがニコニコしながら呼んでくれる。
「うわあぁん! ばあちゃん! ぺるみが変態だよお!」
ベリアルがおばあちゃんの所に飛んでいったね。
「違うもん! の……呪いなの! 仕方ないんだよ! ベリアルゥ……お願いだからぁ。もうひと吸いさせてよぉ」
「この、ど変態が!」
「だから、仕方ないんだよ! 呪いなの!」
椅子に座るとテーブルにリヴァイアサン王がくれた果物が綺麗に切り分けてある。
「うわあぁ! おいしそう!」
「うわあぁ! うまそうだ!」
ベリアルとわたしの声が重なると、おばあちゃんが嬉しそうに笑っている。
「ほら、二人とも『いただきます』だぞ?」
「「いただきますっ!」」
「うまあぁぁい!」
「おいしいぃぃ!」
「ベリアルとぺるみは、よく似てるなぁ。旨い食べ物が好きでいつもニコニコ笑っていて」
おばあちゃん?
わたしとベリアルが似ている?
ベリアルはつぶらな瞳で、かわいくて、甘い匂いで……
うーん?
似ているのかな?
少なくともわたしはヒヨコちゃんじゃないし……
じっとベリアルを見つめると、わたしの視線にベリアルが気づく。
「何、見てんだ? この変態め!」
……え?
今、わたしを罵ったの!?
何?
この気持ちは?
「ちょっと……ベリアル……」
「なんだよ!? お前、神の娘だからってオレを罰するのか!?」
「……もう一回言って! この変態めって!」
「はあぁ!? お前……気持ち悪っ!」
「だって罵られて気持ち良かったんだもんっ! 早く! もう一回!」
「うわあぁん! ばあちゃん! ぺるみが気持ち悪いよぉ!」
「あはは! ぺるみは群馬でお兄ちゃんが欲しいってずっと言ってたからなぁ。良かったなぁ」
おばあちゃん?
確かにお兄ちゃんがいたらいいなって言っていたけど……
もしかして、ベリアルの事をお兄ちゃんって言っているの?
「おばあちゃん。違うよ。ベリアルと『きょうだい』だとしたら、わたしがお姉ちゃんだよ? わたしの方がしっかりしているもん」
「はぁ!? 何、言ってんだよ!? 誰がどう見てもオレの方がしっかりしてるだろ!? オレが兄ちゃんだろ!?」
「違うもん! わたしがお姉ちゃんだから!」
「はぁ!? オレが兄ちゃんだ!」
「ぷはっ! 二人とも赤ちゃんだなぁ。あはは」
吉田のおじいちゃん……
おばあちゃんにぴったりくっついているね。
今日も仲良しだよ。
……?
おばあちゃんとおじいちゃんが涙目になっているような……?
泣くほど笑ったのかな?