二代前の聖女を取り戻せ! (5)
「マグノリア王は……? 民から見て、どんな王様なんだろうね?」
「……」
マグノリア王が辛そうにしているよ。
「自分の目と耳で確かめてみたら?」
「……怖いです。わたしは司教とは違い……答え合わせをする勇気がありません」
「……わたしは……マグノリア王に花丸をあげるよ?」
「……え? はなまる……とは?」
「あぁ……花丸は丸よりも、もっとすごいんだよ。よく頑張りましたって、すごいねって褒められる時に書いてもらえる花みたいな丸なの」
「わたしが……はなまるを……?」
「ふふ。マグノリア王国の民は笑っているから。小さい子もお年寄りも笑っているから。だから花丸っ! えへへ」
「……ペリドット様」
「ああ! しまった! 三十分経っちゃったかな? 急がないと! 棺を確認して……」
「ペリドット様……わたしは見ないでおきます。美しい記憶のまま聖女様を覚えておきたいのです。棺を開けた事はありませんが……想像していた聖女様はそれはお美しかったのです」
マグノリア王はわたしの話を信じてくれたんだね。
「そうですね。わたしも見ないでおきます。それから……わたしは思うのです。聖女様の話はアルストロメリアとリコリスにしておいた方が良いと。いつか何かの記録が見つかった時の為に」
デッドネットル王の言う通りだね。
聖女の棺は代々の王だけが知る秘密。
先代の王から引き継がれなかったとしても、いつか記録が見つかるかもしれないからね。
「そうだね。わたしから話そうか?」
「……あの。もし迷惑でなければ……四大国の王が幸せの島に行く事はできますか?」
「マグノリア王? 大丈夫だけど……魔族がいるけど怖くないかな?」
「ペリドット様のご家族ですから怖くはありません。リコリス王からも遊びに行ったと伺っていますし。それに……埋葬された聖女様に……きちんと謝りたいのです。これは……四大国の王のやるべき事なのです」
「そうだね……分かったよ。じゃあ、とりあえずデッドネットル王を執務室に送らないとね。皆、目を閉じて?」
こうして、デッドネットル王は執務室に戻った。
マグノリア王を送ろうとすると『行きたい場所があるから連れて行って欲しい』って言われたんだけど……
誰かのお墓かな?
「……母の……墓なのです」
すごく辛そうに言葉を絞り出しているね。
「お母さんの?」
「……母は兄弟を殺したわたしを憎みながら亡くなりました。なかなか墓前に来る勇気が出ずに……わたしもすっかり年老いてしまいました」
「……そう」
「……立派な王になり自分の罪を正当化しようとしていました。兄弟が王になったとしてもここまで民を想う事はできなかっただろう……わたしが王になったからマグノリアは栄えたのだと」
「……うん」
「母上……わたしは……わたしはどうすべきだったのでしょうか? あの時、兄に殺されるべきだったのでしょうか? そうすればこんなに苦しまずに済んだのに……」
やっぱりマグノリア王国でも王座を巡って王子達が争っていたんだね。
「マグノリア王……あ……?」
「……?」
四歳くらいの平民の女の子が小さい花を一輪持って歩いてきたね。
どこにでもありそうな野花だけど……
すごく大切そうに持っているね。




