二代前の聖女を取り戻せ! (4)
「マグノリア王……」
すごく辛そうだよ。
「全てが無意味だった……兄弟を殺して王太子になった……母からは蔑まれ、父はそれが王の道だと言った。わたしはあの時……人である事を捨てたのだ。王になり聖女様を蘇らせる事ができれば、この壊れた心が治るかもと……それなのに……まさか聖女様が……もう蘇らない……? わたしは……もう……これから……何を支えに生きていけば……?」
「……マグノリア王。どんな理由だったとしても、マグノリア王は名君だよ?」
「……え?」
「マグノリア王国の民はすごく幸せそうに見えたから」
「……ペリドット様。わたしは兄弟を殺して……」
「それが王の道……? だったらこれから先の王様が間違った道を進まないようにできるのはマグノリア王なんじゃないかな?」
「わたしが……?」
「よく知りもしない他人のわたしが口を挟んだらダメだから……これはマグノリア王の心が前を向けるようにならないと先には進めないから」
「ペリドット様……」
「わたしが浄化をした理由……まだわたしがルゥだった時に話したよね?」
「……はい。魔素の発生源である魔族の亡骸を安らかに眠らせてあげたい……と」
「うん。あとは、人間のお兄様やおばあ様を魔素で苦しませたくなかったの。わたしは『この世界の全ての人間を救いたい』なんて気持ちは微塵も無かったの。知りもしない人間の為に命をかけるほど聖人じゃないからね」
「ペリドット様……?」
「マグノリア王は? 誰の為に王様をしているの?」
「……誰の……為?」
「こんな時に『マグノリアの民の為に』なんて即答されたら『嘘つきだな』って思うのはわたしが腹黒いからかな?」
「……わたしは……わたし自身の為に王をしてきました。わたしの心を保つ為に……兄弟を殺して王になった心を……守る為に……誰よりも王にふさわしかったのだ……と自分に言い聞かせる為に」
「司教が言っていたよ。巡礼の旅に出るのが怖い気持ちもあるって。今まで嘘ばかりついてきたからね。でも、こうも言っていたの。『この巡礼は答え合わせの旅になるだろう』って」
「答え合わせ?」
「今まで嘘ばかりついて神殿を守ってきたけど、心から神殿を愛してきたんだよ。命がけで守り愛してきたから……その思いを民が認めてくれていたのかを知る答え合わせなんだって。ある人間は赦すかもしれないしある人間は赦さないかもしれない。そんな答え合わせ……?」
「……司教がそんな事を」
「民は神殿を……司教を赦すはずだよ? 司教は確かに悪い事をしてきたけど、民は司教を愛しているから。司教は若い頃から巡礼をして民と接してきたの。民はそれを覚えていた。大勢の人間に会ってきた司教は忘れていただろうけど、民はきちんと覚えていたんだよ」
「覚えていた……?」
「絵本を読んでもらったり星を教えてもらったり。司教からしてみたらなんでもない事に思えるかもしれないけど、民にとってはその思い出だけで生きる気力が出るっていうか……大切な宝物なんだよ」
「宝物……?」
マグノリア王が真剣な表情で呟いたね。