二代前の聖女を取り戻せ! (2)
「行けば分かるよ! はい! マグノリア王と護衛は今からわたしと出かけるんだよ! 三十分しかないんだから急いで!」
「え? 空間移動……? 失敗したら身体が裂けるのでは?」
マグノリア王が慌て始めたね。
「大丈夫大丈夫。息さえしていれば治せるから! この前も大丈夫だったでしょう? 行くよ!」
「息さえ……?」
マグノリア王の顔色が悪くなっていくね。
「大丈夫大丈夫。まだ失敗した事は無いから! はい、行くよ! 皆、目を閉じて! あ、この浮かんでいる魚のゴンザレスが空間移動をしてくれるからね!」
本当は、わたしがしているんだけど、それは秘密だからね。
ゴンザレスが付いてきてくれて助かったよ。
「まだ……? それは、これからは失敗するかもという意味ですか? ああっ!」
何か話していたけど長くなりそうだから空間移動しちゃったよ。
……ここが二代前の聖女がいる洞窟か。
場所だけは聞いていたけど……
静かな所だね。
とりあえず、まだ皆は目を閉じているから……
「デッドネットル王、下ろすよ? 足元に気をつけてね」
いつまでもお姫様抱っこをしているわけにもいかないからね。
「……ペリドット様? もう目を開けても大丈夫ですかな?」
マグノリア王はさっきまで慌てていたけど今は落ち着いているみたいだね。
「うん。平気だよ。突然連れてきてごめん。大切な話があるの」
「……! ここは……聖女様の洞窟……?」
デッドネットル王が驚いているね。
「うん。とりあえず中に入ろうか。時間も無いし」
ゆっくり中に進むと……
中は暗いね。
神力で小さい光を出して中を照らすと……
「「聖女様……」」
マグノリア王とデッドネットル王が棺を見て呟いたね。
「ここに来るのは年に一度、四大国の王が揃っている時だったね。でも、今この秘密を知るのはマグノリア王とデッドネットル王だけ……だったよね」
「……はい。そうです」
マグノリア王が少し怖い顔になったね。
普段の優しそうなおじいさんの顔じゃなくなったよ。
「……わたしは……黄金の国ニホンの王女っていう設定だけど、本当はまだ魔族と暮らしている事は知っているよね?」
「はい。ペリドット様は何をお考えですかな?」
「……この棺を開けた魔族がいたの」
「……!? なんと……」
「もうかなり前だよ。マグノリア王が産まれるずっと前……その時には……もう聖女は腐敗していたらしいの」
「……!? 腐敗!? まさか!」
「……開けてみて? この棺を……」
「……そんな……まさか……神官の力が切れたと……?」
「開ければ分かるよ」
「……ペリドット様は……棺を開けさせて何をしたいのですかな?」
「……幸せの島に連れて行くよ」
「幸せの島……? 確か魔族と暮らす島……でしたな」
「うん。魔族は聖女を敬っているの。先代の聖女にすごく助けられたらしくてね。その聖女も数千年前に丁寧に埋葬してくれたらしいんだよ」
「魔族が……!? そうでしたか。先代の聖女様は魔族が埋葬したのですか」
「遥か昔……四大国の王様達は、二代前の聖女の亡骸を保存した。そして年に一度聖女を蘇らせる方法を持ち寄っては試した。でも、それは棺を開けずに行われた。違う?」
「そうです。神官の神力が薄れぬように棺を開ける事はありませんでした」
「遥か昔にその神力は切れていたんだよ」
「……そんな」
マグノリア王が小さく呟いたね。