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これ以上は待たせないよ

「ただいまっ!」


 慌てておばあちゃんの部屋で制服を脱ぐとワンピースに着替える。

 あ、そうだ。

 二代前の聖女の着替えを用意しないと。

 確か新品があったはず。

 ショルダーバッグに入れて、これでよし。

 広場に行くと、第三地区の皆に話し始める。


「わたし、ちょっとデッドネットルとマグノリアに行ってくるよ! ベリアルは第三地区で待っていて? わたし一人で行ってくるから」


「は? オレも行くよ。洞窟に行くんだろ? オレは……」


「うん。分かっているよ? でも……ベリアルにも吉田のおじいちゃんにもバニラちゃんにも二代前の聖女の姿を見せたくないの。お願いだから待っていて? ね?」


 たぶん酷い状態だろうからね。

 これ以上傷ついて欲しくないの。


「でも……」


「ベリアルは吉田のおじいちゃんの側にいてあげて? 一人じゃ待つのが辛いだろうからね。ベリス王、一時間で帰るから。そうしたらアルストロメリアに行くから。少し待たせちゃうけどごめんね」


「……それは構いません。ですが……人間は簡単には先々代の聖女を諦めないはずです」


 ベリス王の言う通りだね。

 でも……


「諦めさせるよ。絶対に。これ以上吉田のおじいちゃんを苦しませたくないの。聖女を……大切な家族を一人で洞窟にはいさせないよ。バニラちゃんもベリアルと待っていてね」


「ペルセポネ……一人で平気なの?」


 バニラちゃん……

 わたしはあなたで、あなたはわたしでしょう?

 信じて待っていて?

 聖女はもう腐敗しているらしいから……

 見ない方がいいの。

 見ればもっと辛くなるから。


「一人で行きたいの。それから……お願いがあるの。洞窟での今からわたしがやる事を水晶で見るのはやめて欲しいんだ」


「え? なぜですか? 何かあった時に助けられなくなってしまいます」


 ベリス王は変わったね。

 初めて会った時はわたしを騙そうとしていたのに。


「大丈夫だよ。わたしが人間に負けるはずがないし。これからわたしが洞窟で話す事を吉田のおじいちゃんに聞かれたくないの。あ、もちろん『天使』がとか、そんな話をするんじゃないの。人間から聖女の話を聞くのが辛いと思うから。それに……これは人間が解決しないといけない事なの。わたしは『ルゥ』として王様達と話してくるよ」


「……簡単には、いきませんよ?」


「わたしは異世界では『へりくつルーちゃん』って呼ばれていたんだよ? 大丈夫。ハデスとヴォジャノーイ族のおじちゃん達も第三地区で待っていて? 多少は揉めちゃうだろうから。見ていたら助けに来たくなっちゃうでしょう?」


「それはダメだ。わたしは陰から見て……」


 ハデス……

 ハデスが来ると『聖女を知る人間を消せばいい』って暴れ出しそうで心配なんだよ。


「ハデス……お願いだよ。今回の事はわたしが一人でやりたいの。やらなきゃいけないんだよ。長すぎる時を経てわたしとハデスは幸せになれたの。今度は……吉田のおじいちゃんと息子さんの願いを叶えたい。それはわたしがやるべき事だと思うんだよ」


「……ペルセポネ。危なくなったら空間移動をするのだぞ?」


 ハデスが優しく抱きしめてくれたね。


「うん。わたしを信じてくれてありがとう。バニラちゃん、吉田のおじいちゃん、絶対に二代前の聖女を取り戻すから……待っていてね?」


 だから……

 わたしの心を聞かずに待っていて。

 信じて欲しいの。

 わたしは初代の神様ウラノスのひ孫で、群馬では吉田のおじいちゃんにおむつまで替えてもらって……この世界に来てからもおじちゃんはずっとわたしを守ってくれた。

 今こそおじいちゃんの『二代前の聖女を埋葬したい』っていう願いを叶える時なんだよ。

 バニラちゃんもずっと『二代前の聖女を生き返らせたい』と思っていたけど……もう聖女の身体は腐敗しているから。

 どれだけ辛かったか……

 これ以上は待たせないよ。

 二代前の聖女の存在を知る人間に『もう聖女を手離す時が来たんだ』って分かってもらうんだ。

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