彼女の父親に会うのは緊張するよね
「さて、今日の講義は終わりだね」
今日は忙しいんだよね。
急いで帰ってアルストロメリア王国に行った後に夜からは天界でお父様の代理で神様をしないといけないんだ。
はぁ……
気が重いな。
問題が起きたらどうしよう。
でも……その前にやらないといけない事があるんだ。
これ以上先延ばしにはできないからね。
二代前の聖女を絶対に救い出さないと。
「ペリドット様は今日も露店商市場に行くんですか? ぐふふ」
前の席のジャックが眠っているベリアルをニヤニヤ見つめながら話しかけてきたね。
「あ、今日はアルストロメリアのお祭りに誘われているの。その後は家族に頼まれ事をされているんだ。ジャックは明日の休みはリリーちゃんとデート?」
「ええ!? あの……はい。弟達の為に絵本を買いに行こうかなって……」
「真っ赤になってかわいいね」
「え!? あ、いや……恥ずかしいです」
「あはは! あ、そうだ。司教から聞いたんだけど『神殿の救世主』の絵本は三種類あるらしいの。王族用と貴族用と平民用だったかな? 内容は同じらしいから間違えて王族用を買わないように気をつけてね? かなり高額らしいから」
「ええ!? そうなんですか!? ……内容が同じなら平民用の物を買おうかな」
「そうだね。わたしでもそうするよ。だって内容が同じなら高い物を買ったらもったいないからね」
「あはは! ペリドット様のそういうところが親しみやすいんですよね」
「ふふ。で? 絵本を買った後は? どこかでお茶でもするのかな?」
「あの……はい……露店商市場で相談役の飴細工でも食べようかって話していて」
「ふふ。相談役の作るヒヨコちゃんの飴細工はすごいからね」
「そうなんですか? うわあぁ! 楽しみだなぁ。あの……ペリドット様……実は今日リリーさんのお父さんが王都に来る事になっていて」
「あ、そうだったよね。お兄様に温泉の話をしに行くんだっけ?」
「はい。精霊様が温泉を作ってくれたからその報告なんですけど……今日の夕食を一緒に食べる事になっていて」
「そうなんだね。ふふ。緊張しているのかな?」
「はい。緊張して失敗しないか心配で」
「普段通りのジャックなら絶対に大丈夫だよ」
「……はい。あぁ……ドキドキしてきた」
ジャックの身体が小さく震えているね。
「わたしまでドキドキしてきたよ」
「ペリドット様……本当にありがとうございます。ペリドット様が応援してくれたからリリーさんと結婚できるんです。しかも、商売まで決まって……」
「全部ジャックが頑張ったからだよ? ふふ。いつも通りの優しいジャックならリリーちゃんのお父さんも安心してリリーちゃんを任せられると思うんじゃないかな」
「……いつも通りのオレか。はい。頑張りすぎずに頑張ります」
「え? あはは! うん。そうだね」
どこの世界でも『娘さんをください』って父親に言う時は緊張するんだろうね。
ジャックは誰とでもすぐに仲良くなれるからきっと上手くいくよ。