ジャックは勉強が楽しくなったんだね
こうして、魔術科の広場から普通科のクラスルームに帰ってきたけど……
魔術科の平民の皆は頑張りすぎちゃうところがあるからね。
無理だけはさせないようにしないと。
「ぺるみ、疲れたか?」
バスケットに入っているベリアルが心配そうに話しかけてくれているね。
「ヒヨコちゃんがわたしを心配してくれている。ぐふふ。堪らないね」
「……お前のノーマルは完全に変態に負けたんだな」
「……そうだね。半日しかもたなかったよ」
「あはは! この方が楽しいですよ。魔術科はどうでしたか?」
前の席のジャックが笑いながらベリアルを抱っこしたね。
「うん。皆あっという間に魔術を使えるようになったよ。今まで努力してきたからその成果かな?」
「そうなんですか。良かったです」
「ふふ。ジャック達は予習をしていたのかな?」
「はい。アメリアさんに次の講義の重要なところを教えてもらいました」
「アメリアちゃんが……」
「はい。公女様がいなくなったから頭が悪い振りをしなくて済むようになったみたいで」
「ジャックもアメリアちゃんが賢い事を知っていたんだね」
「あはは。クラスの皆も知っていましたよ?」
「貴族も気を使わないといけないから大変だね」
「はい。でも……オレはこのクラスの皆と一緒に勉強できて幸せです。毎日がすごく楽しいし」
「わたしもだよ? あ、ふふ。ヒヨコちゃんは眠っちゃったね」
「昼食後でお腹いっぱいだし。氷の魔法石で涼しいですからね」
「そうだね」
「ぐふふ。ずっと抱っこしていたいけど……もう講義だから。オレ、リリーさんと幸せに暮らせるように勉強を頑張る事にしたんです」
「素敵だね。ジャックなら絶対に幸せになれるよ」
「あ、そうだ。ペリドット様、聞きましたか? 昨日、先生とジャック先生が手を繋いでレストランから出てきたらしいですよ? すごいですよね。プリンアラモードを食べた皆が幸せになってるみたいですよ」
「あはは。普通のプリンアラモードなんだけどね」
「幸せのプリンアラモードですよ。あはは。あ、ペリドット様、これを見てください」
ジャックがベリアルをバスケットに寝かせると教科書を開いてわたしに見せてくれる。
「うわあぁ! すごいね。難しい言葉に説明書きがしてあるよ」
「これで午後の講義は理解できるはずです」
「ジャックも頑張っているんだね」
「はい! 今まで全然勉強してこなかったから大変だろうけど、頑張る理由ができたから。それに勉強って理解できると楽しくて」
「そうだね。あ、先生が来たね」
「はい。すごく幸せそうです」
「好きな相手がいると世界が輝いて見えるからね」
「オレも……今すごく世界が輝いて見えます」
ジャックがリリーちゃんを見つめながら顔を真っ赤にしているね。
わたしの身体からバニラちゃんが出ていったからわたしが人間を嫌いになる事は無いのかな?
もう世界の補正力はわたしには効かなくなった?
よく分からない事ばかりだけど、これだけは分かる。
やっぱりわたしは人間が大好きなんだよ。