頑張るって大事だね
「じゃあ、始めようか。お昼休みなのに悪いけど、わたしの話を聞いてくれるかな?」
魔術科の広場で平民の皆に話しかける。
「あ、昨日はありがとうございました。おかげさまで水が出てくるようになりました」
「昨日のジャックだね。良かったね。すごく頑張っていたってマリーちゃんが言っていたよ」
「え? あ……はい。夢に向かって頑張ろうって思えて。ペリドット様のおかげです」
「ふふ。頑張ったジャックがすごいんだよ」
「あの……友達のジャックにも力の使い方を教えて欲しいんです。水の力じゃないから教えられなくて」
「もちろんだよ。えっと、あなたかな?」
「はいっ! あの……オレは土の力を使えるらしいんですけど。正直、どうしたらいいか分からなくて」
「なるほど。土か……」
「やっぱり土属性なんて……いらないですよね。魔法石に入れるのは火とか水とかだし……」
「え? そんな事はないと思うよ? 四大国の王様とも話していたんだよ。魔素が祓われたら土に栄養が無い事に気づいたってね」
「土に栄養が無い?」
「うん。ジャック……もしかしたら土属性はこれからかなり重要になってくるかもね」
「ええ!? 本当ですか!?」
「例えば『四大国のアカデミー魔術科対抗魔術戦』で栄養の無い土を蘇らせる事ができたら偉そうな貴族……もしかしたら王様達もジャックの取り合いになるかもね」
「オレの取り合いに!?」
「うん。聞いた話なんだけど、土属性を使える人間はかなり珍しいんだって」
「……! そうなんですか!?」
「うん。アカデミーに他に土属性の人間は、いるのかな?」
「いえ。先生の中にもいなくて……だから教えてもらえなくて」
「そうだったんだね」
「土属性なんて使えないってバカにされたけど……オレ……土属性で良かったです」
「バカにされた? もしかして魔術科の貴族に?」
「……はい。何の役にも立たないのが土属性だって……」
「物を知らないって恥ずかしいよね」
「ペリドット様……オレに土の力の使い方を教えてもらえませんか?」
「ふふ。もちろんだよ。土の力以外の皆も一緒にやってみよう? やり方は同じだから」
「やり方は同じ……?」
「あ、詠唱は属性によって違うんだっけ? でも想像の仕方は同じだからね。まず自分の属性の物を『丸く出す』みたいな感じを想像してみて? 真ん丸のかわいいヒヨコちゃんを思い浮かべてみるの」
「「「はいっ! 」」」
皆すごく良い返事だね。
「うーん。土でヒヨコ様を……うーん? こうかな? うーん……」
「ふふ。いきなりは難しいけど……じゃあ、砂を一粒出してみようか」
「一粒の砂を……はい! うーん……難しいな……」
「何も無い空間からそこに無い砂を出すのは難しいからね。じゃあ、広場の砂を左右に動かしてみようか。そこにある物を動かす方が最初は簡単かもね」
「はい! 広場の砂を……うーん」
「とりあえず一粒動かすイメージかな?」
「はい! 一粒ですね。よし! うーん……あ、詠唱をしていないからダメだったんだ。モニョモニョモニョモニョ……」
やっぱり詠唱はモニョモニョなんだね。
詠唱なんて意味ないんだけどそれは教えたらダメなんだよね。
元々生まれ持った魔力は詠唱無しで使えるんだよ……
「あ! 動いた! うわあぁ! ペリドット様! 動きましたよ!」
「おお! すごいよ! 天才だよっ!」
あっという間に出来ちゃったね。